緊迫のプーチン政権。「ワグナーの乱」粛清で“第2の反乱”の可能性

 

ロシアの状況

プリゴジンの乱は、ルカシェンコ大統領の仲介で、大きな内戦にもならずに終結した。

このプリゴジン氏と密接な関係があるスロビキン露航空宇宙軍総司令官が拘束されて、尋問されているという。またスロビキン将軍の副長であるアンドレイ・ユーディン大佐がロ軍から解任された。

プリゴジン氏と関係あるGRUやFSBの関係者も取り調べを受ける可能性があり、プーチンに忠誠を尽くすジョイグ国防相を中心に、取り調べを行うようであり、国防省とFSBやGRUとの関係も緊張した状態のようである。

ロシア大統領府と緊密な関係を持つ政治コンサルタントのセルゲイ・マルコフ氏は「大規模な調査が始まった」とし、「プリゴジン氏やワグナーと関係のあった全ての軍幹部、当局者は聴取されるだろう」と語った。

このため、ジョイグ国防相を辞任させようとする動きもあり、政権内での緊張が大きくなっているようだ。第2の反乱が起きる可能性もある。

ロシア国内には、重装備のロ軍がいないことも、この反乱で判明した。ということは、ロ軍内で反乱がおきて、モスクワに向かうことになると、阻止するのは、軽装備の国家親衛隊や治安維持警察隊やチェチェン軍しかいないことになる。

このため、次の反乱で、前線に近い重武装部隊の反乱がおきると、ロシアは継戦能力を失うことになる。前線部隊をモスクワまでの道に配備する必要があり、ウ軍との戦闘をする余裕がなくなる。

この中、ウ軍ブダノフ情報総局長は、ロ傭兵集団「ワグナー軍」の戦闘員は今後、ウクライナで戦闘を行わないと発言した。ワグナー軍は解体されて、一部はベラルーシに移り、多くはロ軍と契約や退役になるのであろう。ロ軍の戦闘能力の低下にもなっている。

ロシア国内の戦争体制は、大きく毀損することになる。このため、ロシアでは移民の大量逮捕が毎日続いている。クレムリンは戦争遂行ために、彼らをウクライナ戦地に送る予定だという。

しかし、毎日500名以上の戦死者、その3倍の負傷者を出しているので、月6万人程度の戦線離脱者が出ている。今年1月から6月までに新規志願兵は11万人であるから、2ヶ月で使い切ることになる。このため、前線の兵員不足は大きくなり、第2次大規模部分動員が、7月下旬から8月上旬に実施という噂で、ロシア出国準備をする若者が急増している。徴兵拒否者も多く、兵員不足は慢性的になる。

そのように、プリゴジンの乱は、大きくロシアの国内情勢を変化させている。このため、プーチンは、国内引き締めのために、地方都市の国民に熱烈歓迎を受ける姿を公開し、人気健在ぶりをアピールした。反乱後でも、人気が高まるプリゴジンに対抗するためとみられる。

そのプリゴジンは、ベラルーシとロシアを往復している。ベラルーシには、ワグナー軍野営地と思われる場所に約300のテントがある。そこに約8,000人が収容できる。

この人員で、アフリカでの権益をどう守るかが、次の課題なのであろう。まだ、プリゴジンは、何かを行う可能性がある。

このプリゴジンに対して、ロシア連邦保安局FSBが抹殺する指示を受けたようだと、ウ軍ブダノフ情報総局長は言う。

どちらにしても、ウロ戦争は終盤に近い。ウ軍が戦闘で徐々にでもロ軍を打ち負し続けると、どこかでロ軍で反乱がおきて、プーチン政権は崩壊する。戦争を続けることができずに、ウクライナが示す停戦条件を受け入れるしかない。

さあ、どうなりますか?

(『国際戦略コラム有料版』2023年7月3日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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