開戦からまもなく1年半を迎えるウクライナ戦争。ロシアによる侵略は、このままさらに長期化・泥沼化してしまうのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、世界からゼレンスキー大統領に向けられている「停戦圧力」について解説するとともに、この戦争が停戦・休戦可能か否かを考察。さらに停戦を巡る水面下の折衝において、日本が意味のある働きをしている事実を紹介しています。
ゼレンスキーに向けられる停戦圧力。ウクライナ戦争の落としどころ
「今年末までには、何とか停戦、または休戦に持って行くというプレッシャーが至る所でかかってきている」
ウィーンでお目にかかることになったいろいろな専門家や、調停グループの仲間たちからこのような分析を示されました。
「いつまでもこの戦争を継続させることはできない。欧州では経済的なスランプと物価高が国民生活を脅かしているし、アフリカやアジア、そしてラテンアメリカの国々における食糧・エネルギー資源の危機が、もう持続不可能なレベルにまで迫っている。そして何よりも、欧州各国、特に中東欧諸国内で巻き起こっているウクライナからの避難民に対する反感の高まりは危険なレベルに達しており、国内での政情不安につながりかねない事態になってきている」
さまざまな利害を持つグループが入り混じった会合でシェアされた分析です。
ロシアの関係者に聞くと「そらみたことか。これは欧米諸国が自ら作り出した問題だ」という反応でした。
ウクライナの関係者については、「ウクライナからの避難民に対する反感については、実際に耳にしており、非常に懸念している。ただこればロシアの蛮行が作り出した事態であり、我々は被害者だ」という反応が返ってきました。
ここで言われる【ウクライナからの避難民に対する反感の増大】ですが、さらに分析を深めてみると、どうもこのようなことみたいです。
「ウクライナから国外に逃げることが出来た人たちは、逃げることが出来るだけの財産・余裕があるものたちだ。それなのに中東欧諸国の政府はイメージづくりなのかわからないが、彼ら・彼女たちに対して社会サービスを無償で、優先的に与えている。このことで各国の社会福祉システムがおかしくなり、教育現場もおかしなことになってきている。各国の財政はひっ迫し始め、その煽りが、本来国内で社会支援が必要な層に転嫁されている。このことに対する反感の増大は、もう抑えきれないレベルにまで達しており、中東欧諸国での政情不安につながる恐れがある」
とのこと。実際に、今、滞在しているオーストリア・ウィーンでも対ウクライナ避難民に対する特別措置が講じられており、昨夜、お話ししたオーストリア政府の関係者からも、その制度の危険性が言及される状況になっています。
オーストリア政府関係者も、中東欧諸国の政府関係者も国内でこの問題が大きくなり始めていることに気づきつつも、なかなか他に先駆けて“一抜けた”ができないと言っていましたが、「近く限界が来るだろう」とも言っていました。
そのような中で一刻も早い停戦または休戦に向けた圧力がアメリカだけでなく、欧州でも強まっています。
それぞれの背景には国内政治事情が大きく絡んでいますが、少し事情の内容が異なり、またその“圧力”も一方向ではないようです。
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