ゼレンスキーの絶望。世界中からウクライナに向けられる「停戦圧力」

 

いち早く休戦状態に持ち込みたい欧米各国

では、今回のロシア・ウクライナ戦争はどうでしょうか?

ロシア・ウクライナという当事者間と、“当事者”になろうとするアメリカ、中国、NATO各国(この場合、想定されるのはNATOではなく、英仏独イタリアなどだと考えられる)、そしてUNが関係者として協議に関わることになると思われますが、「船頭多くして船山に上る」ということわざがあるように、それぞれの思惑が交錯することで、協議はかなり難航することが容易に予想できます。

一番現実的なのは【(一時)停戦】で、これはアメリカ政府が水面下でウクライナ政府に求めている形式です。

この場合、「一旦戦闘を止めて、相互に頭を冷やす」という目的がありますが、ほとんどの場合、休戦協定や平和条約のように、領土的な合意などは含まれず、ただ戦闘状態を一旦停止する“だけ”という性格と考えられます。

この場合、アメリカや中国などの両サイドの背後にいる国々は何らかの口出しをしがちですが、実際に表に出てきて当事者になることは避ける傾向が強いと思われます。

そしてまた、私のような調停人が直に関わることが稀な段階とも考えられますが、私は時折、この段階から呼ばれることも多く、調停グループも停戦の手助け・仲介を行う準備をしています。

ただこの停戦状態は、私たちがニュースでもよく見聞きするように、偶発的な戦闘や小競り合いを機に破れ、戦争の激化につながることも多く、今回のロシア・ウクライナ戦争でも何度となく“停戦”が試行されていますが、これまでのところ機能していません。

今、国内の政治事情、アメリカの場合は来年の大統領選挙に向けて何らかの“成果”をアピールしたいという狙いから、ウクライナに“停戦”を要請していますが、それをウクライナが受け入れるかも分かりませんし、ロシアが受け入れるかどうかも見えません。

今のところ「できれば年内に、遅くとも来春までに、一旦停戦することを求める」という要求がアメリカからウクライナ、そして水面下でロシアにも届いていますが、先ほども触れたように、その見通しは明るいとは言えません。

唯一、動くとしたら、ロシア・ウクライナが戦争疲れしていて、一旦、態勢の立て直しを図りたいと“同時期に”感じるという条件が満たされる場合になりますが、いろいろと入ってくる分析を見ても、その可能性はあまり高いとは思えません。

ただ最近の話し合いの中で「休戦を目指すべき」という考えが頻繁に出てきています。

休戦となると、先ほど定義したように何らかの合意が当事者間で成り立ち、戦闘状態を半永久的に停止することになりますが、ロシア・ウクライナという交戦当事者はもちろんですが、他に誰が当事者・関係者、協定の実施者になるのかは非常にもめることになります。

あり得る構成としては、ロシア、ウクライナ、米国、中国、UN、英・仏・独・伊の欧州各国、NATO、そしてトルコが考えられますが、恐らくバランスの不均衡が問題になると思われます(ちょっと欧米側に偏りすぎとの指摘)。

戦争疲れを経験し、国内からの突き上げを受けている欧米各国にとっては、いち早くこの休戦状態に持ち込みたいという想いがあり、ロシアもウクライナも「お互いの顔を見たくもない」といいつつも、“条件が満たされれば”協議を進めることは否定していません。

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