日本人の生真面目さが却って生産性を落としてしまうという皮肉
デジタルの時代になり、インターネットが普及したことによって、人々は時間や空間の制約から大幅に解放されました。その結果、「働き方改革」などの掛け声と共に、人々の働き方も変革期を迎えました。本メルマガでも、以前から何度か「働く」ということをテーマに問題提起を続けてきました。
「新しい働き方」に関する議論や論争に終わりはないように見えますが、つまるところ、会社にとっては、「会社の収益や成長に最も貢献する社員の働き方とは何か」というテーマに収束し、社員にとっては、「自分がやりがいを感じ、社内での評価が高まって昇進や昇給につながり、幸せを感じる働き方とは何か」というテーマに収束します。
そしてその双方の立場から行きつくところは、「社員(自分)の生産性、創造性、パフォーマンス、モチベーションを最大化する働き方とは何か」ということで、会社と社員双方が目指す共通のテーマということになるでしょう。生産性やパフォーマンスが向上すれば、創造性やモチベーションも向上して幸福度も高くなることが知られています。幸福度が高まれば、さらなる生産性やパフォーマンスの向上をもたらす好循環が生まれます。
当然ながら、出社かテレワークか、というのは、二者択一の話でもなければ、どちらがより優れた働き方なのか、というような話でもありません。テクノロジーが進化する前は、出社する以外の選択肢がなかったのに対して、今では、出社しなくても仕事ができる、というありがたい選択肢が増えたということです。ですから、前述の通り、これらを賢く組み合わせたハイブリッド型の働き方が、当面の落としどころになるのは言うまでもありません。
そしてこの先、メタバースのような世界がさらに進化すると、職種によっては、物理的なオフィスの存在や、そこに出社するという行為そのものが必要なくなる時代がやってくることになるのだと想像します。
オフィス回帰は大いに結構ですが、日本でよく目にしてきたのは、台風や大雪などで天候が大荒れとなり、公共交通機関が麻痺したような時にも、とにかく何が何でもオフィスに出社しようとして駅構内に人が溢れ、改札の外にまで長蛇の列ができるような光景です。いわば、日本人の生真面目さが、却って生産性を落としてしまうというのは皮肉です。
大事なことは、オフィスでのプレゼンスよりも、仕事の生産性を向上させ、成果を高めて自分のモチベーションや幸福度を上げること、と捉えれば、そのような時には、やむを得ない事情が無い限り、無理に出社するよりも自宅や近くのカフェで仕事をする方がよいに決まっています。
会社は、働き方の多様性や柔軟性を尊重した上で、出社とテレワークのバランスの全体最適を図らねばなりませんし、社員は、一定の裁量権を得た上で、自分の特性や都合に合わせてそのバランスの部分最適を図らねばなりません。この双方からのアプローチを上手くかみ合わせることが肝要です。コロナがきっかけになって、ようやく少しずつ変わり始めた日本の働き方ですが、経営者の無理解や、周囲の同調圧力で、すっかり元に戻ってしまうようなことだけは避けて欲しいと思います。
ちなみに当社では、もともとテレワークを活用してきましたが、コロナを機会に完全なテレワークに移行しました。コロナが明けてからは、月に一度、オフラインでスタッフ全員が集まる機会を作っているという点ではハイブリッド型ですが、ほぼ完全なテレワークを継続しています。今のところ、このスタイルで特に業務に支障はありません。
※本記事は有料メルマガ『『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』~時代の本質を知る力を身につけよう~』2023年8月18日号の一部抜粋です。興味をお持ちの方はこの機会にご登録ください。
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