「処理水問題」と「米中対立」に共通。正しく伝えないメディアの存在

 

一方の西側先進国のメディアの報道には、米中間で何かが進展したという伝え方はほとんどしていない。「関税などの撤廃」を求めた中国の申し出を拒否したとか、中国ビジネスにおける「懸念を伝えた」と、まるで商務長官が文句を言うために北京を訪れたような印象を与える記事が目立った。

代表的なのは米ブルームバーグだ。同メディアは8月29日に「中国は『リスク高過ぎて投資できない』、米商務長官が企業の声に言及」と報じている。これは不思議な記事で、現状、中国でビジネスに携わる日本人と話をしていて感じるのは、中国にあるリスクは、通常の商行為の中で起きることではなく、米中対立によって生じる「政治リスク」だ。

中国とのビジネスには歴史があり、中国のやり方は粗方わかっているのだから当たり前だ。また対中投資リスクがそんなに高いのであれば、米企業がこれほど長期間とどまり、ビジネスを拡大し続けたはずはない。彼らには利益を度外視してまで中国に留まる理由などないからだ。技術移転の強要や関連する法律やルールの変更など、中国には問題が多々あれど、それを上回る利益があったからこそ、ここまで対中投資が拡大され続けてきたのだ。

そして現在、中国でビジネスを展開する企業の懸念は主に、「何をどこまで自粛したらよいのか」という輸出制限の成り行きに集中している。これは同時に「いつかどこかのタイミングで重要な部品や材料が入らなくなるかも」というリスクでもある。繰り返しになるが、リスクの根源にあるのは「政治」だ。

中国に進出した企業の悩みがそうなのであれば、中国自身がアメリカの動きに神経質になるのは避けられない。アメリカが「スモールヤードだ」といったところで、安穏とはしていられない。実際、トランプ政権下で目の敵にされた華為技術(ファーウェイ)は、主力の一つだったスマートフォン端末の製造で狙い撃ちされ、致命的なダメージを負った。半導体の供給を断たれたファーウェイはハイスペックなスマートフォンの製造を諦めざるを得ないところまで追い詰められた。中国人ならば、そのことは誰もが知っている。

しかし、そのファーウェイは偶然なのか、レモンド長官が中国を訪問とほぼ同時期に、新機種「Mate 60 Pro」の予約受付を開始したと発表したのだ──
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2023年9月3日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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