不審死事件の説明なし。官邸脱出に成功した木原誠二は、まだ“影の総理”を続けるつもりか?

 

岸田・木原の利益を確保する方策としてひねり出された奥の手

日本の首相は米国に嫌われると短命に終わっている。岸田首相は明確な国家ビジョンが感じられない半面、長期政権を担いたい意欲は十分で、「バイデンのポチ」と揶揄されようが、意に介さない。その点では、エマニュエル大使と木原氏の良好な関係が岸田首相に安心感をもたらしているといえるだろう。

木原氏を官房副長官にとどめておくリスクと、“懐刀”を失うマイナスを、どう量るか。岸田首相は、その計算さえも、木原氏に任せたのではないだろうか。

木原氏が自民党政調会の副会長だった2018年、元夫の怪死事件をめぐり、警察の事情聴取を受けて帰る途中の妻に、「俺が手を回しておいたから心配するな」と話していた音声がタクシーのドライブレコーダーに残されている。そして、妻の事情聴取を担当した元刑事が「あれは自殺じゃない。事件なんですよ」と断言している。

しかし、警察庁と警視庁は事件性を否定し、捜査に幕を引いた。大手メディアもこの問題を大きく取り上げることはなく、とりわけテレビは完全なる沈黙を続けている。

このまま時が過ぎるのを待てば、文春砲もネタ切れになって問題は終息するかもしれない。岸田首相も木原氏もそう思いたかったに違いない。だが、内閣支持率の低迷に“木原疑惑”が影響しているのは明らかだった。

木原氏をこれからも変わらず“軍師”として抱えておきたい岸田首相と、メディアや野党の追及を受けやすい官房副長官というポストから脱出したい木原氏。二人の利益を確保する方策としてひねり出されたのが、幹事長と政調会長の補佐的役職を兼務するという奥の手ではなかっただろうか。

幹事長と政調会長の補佐というのは、実に曖昧な立場だ。だいいち、茂木幹事長や萩生田政調会長が、岸田首相と深く繋がっている木原氏にどんな指示を出せるというのか。

木原氏にとってなにより重要なことは、このポストには番記者がつかないことだ。官邸記者クラブからも、平河クラブからも自由になることができる。政治的存在感は失せるが、“木原疑惑”が続くかぎり、好都合な立場だ。

木原氏とエマニュエル大使のパイプという観点からは、外務大臣が林芳正氏から同じ宏池会の上川陽子氏に交代した人事についても、米側の意向に沿ったニオイがプンプンする。

外から見る限り、林氏はG7外相会合の議長をスマートにこなし、エマニュエル大使とも上手く付き合ってきたと思える。しかし、中国にはっきりモノが言えず、「親中派」と米国サイドで見られている林氏は、要求水準の高いエマニュエル大使にとって、腹の内がつかめず、物足りない存在だったのではないか。

おそらく、エマニュエル大使と木原氏との対話のなかで、そのたぐいの話はしばしば出ていただろうし、そのことを木原氏が岸田首相に伝えていたに違いない。

岸田首相は林外相に交代を告げたさい、「派閥をがんばってほしい」と理由を説明したといわれる。ようやくめぐってきた「宏池会」の時代。岸田首相は来年の総裁選で再選を狙うが、いつかは林氏にバトンタッチして、“宏池会政権”を長続きさせたいという思いがあるはずだ。そのためには、現有勢力46人で第4派閥に甘んじている宏池会をもっと大きくしなければならない。

むろん、「宏池会」ナンバー2の林氏は、会長である岸田首相にとって総裁選のライバルにもなりうる存在だ。その台頭を抑えるためとか、首相外交を際立たせたいためとか諸説あるが、最も重要な外相交代の狙いは、米国政府の納得を得ることではなかっただろうか。

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