旧ソ連の盟主の座を失うロシア
私は、ロシアがウクライナに侵攻を開始する前から二つの話をしていました。
- プーチンがウクライナ侵攻を決断する可能性がある
- プーチンがウクライナ侵攻を決断すれば、ロシアの戦略的敗北は不可避
実際、ウクライナ戦争の結末に関わらず、ロシアはすでに戦略的に敗北しています。これについて話し始めたら長くなるので詳細は語りません。しかし、一つ例を挙げておきましょう。
プーチンは、「旧ソ連は、ロシアの勢力圏だ」と考えています。そして、軍事同盟「集団安全保障条約機構」(CSTO)を主導している。加盟国は、ロシア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタンです。
アルメニアはCSTOの加盟国。同盟国のアルメニアが、アゼルバイジャンと戦争をしている。ロシアは、アルメニアを助けないのでしょうか?
ロシア外務省のザハロワ報道官は「軍事行動を直ちに停止し、政治的・外交的解決の道に戻るよう」求めました。
(同上)
プーチンは、同盟国アルメニアを助ける気が全然ないのです。助ける気もないし、ウクライナ戦争が大変で助ける余力もない。
2022年9月にもナゴルノカラバフで紛争が起こっています。この時も、プーチンは、同盟国アルメニアを見捨てた。それで、アルメニアは、「CSTO意味ねえじゃん!」と激怒し、脱退を検討しはじめたのです。
CSTOからの脱退を検討しているのはアルメニアだけでなく、カザフスタン、キルギス、タジキスタンもです。CSTO6か国のうち、4か国が脱退を検討している。要するにCSTOは崩壊寸前だということです。これも、「ロシアの戦略的敗北」の一つでしょう。
「盟主」ロシアがボロボロなので、旧ソ連諸国はバラバラになっています。ウクライナ、モルドバ、ジョージアは、EUに加盟申請した。アゼルバイジャンは、トルコに走った。アルメニアは、アメリカ、フランスに接近している。中央アジア諸国は、中国に走り、「運命共同体をつくる」と宣言している。
今起こっているのは、「ソ連崩壊2.0」ということでしょう。戦術脳のプーチンは、「旧ソ連の盟主」でありつづけようとしてウクライナに侵攻し、逆にすべてを失ってしまったのです。
(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2023年9月20日号より一部抜粋)
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