どうしても消えないロシアの関与への疑念
調停グループでも、先週から急遽、中東対応に時間とエネルギー、リソースを注ぎ、イスラエルとハマスの衝突がアラブ社会に伝播することがないように周辺国に対して予防調停を行っていますが、私たちが感じる緊張感と熱は、日に日に高まっており、それがまた懸念をさらに募らせる事態になっています。
18日にヨルダンに赴き、アブダラ国王(ヨルダン)、アッバス議長、そしてエジプトのシシ大統領とバイデン大統領が会談する予定でしたが、それもガザの病院の爆撃を受けてアッバス議長が3日間服喪すると発表したことと、アラブ諸国側がバイデン大統領と会うことで予想されるアラブ社会におけるバックラッシュを懸念したため、ドタキャンされる始末になり、なかなか解決の糸口が見つかりません。
イスラエルに対して停戦を呼び掛け、ガザへの総攻撃を思いとどまるようにプレッシャーをかけることが出来るのはアメリカだけなのですが、そのアメリカがイスラエルとべったりな姿を鮮明にしてしまったことで、アメリカによるいかなる調停も非現実的なオプションになってしまいました。
今後、反アメリカの波が、中東のみならず、他の地域でも巻き起こりそうですが、18日から19日にかけてイスラエルがヒズボラに対しても攻撃を始めたとの情報は、中東地域のデリケートな安定が遅かれ早かれ崩れ始めることを予感させます。
そして4つ目ですが【どうしても消えないロシアの関与への疑念】についてです。
これまで長い間、ロシアのプーチン大統領とイスラエルのネタニエフ首相は、互いを親友と呼ぶほど、非常に近しい関係でした(そして、きっと、今もその友情は変わらないはずです)。
オバマ政権下でイスラエル軽視の姿勢が見え隠れし、一旦、トランプ政権時に関係が修復されましたが、バイデン政権になって、イスラエル・中東軽視の傾向がまた出てきたと言われています。
とはいえ、中東和平の実現のためとイランに対する牽制(特に中国がイランとサウジアラビア王国の国交樹立に一役買ってから)のために、イスラエルとサウジアラビア王国の国交樹立の仲介をしてきたのですが、その努力が水泡に帰することとなりそうです。
未確認情報ですが、今回のハマスの行動を支え、武器弾薬を支援してきたのは、イランではなく、ロシアだという情報が入ってきています。
ロシアは、ご存じの通り、自らが行ったウクライナ侵攻で非常に苦戦し、様々なリソースが割かれ、決してほかのところで大規模戦争を戦っている余裕がないはずですが、ここ数年、中東地域における影響力を著しく高めている中国と組んで、中ロのTermsでの中東地域の安定化に努めるという動きが出てきていました。
経済的なパートナーシップや軍事的な支援、そして欧米諸国とその仲間たちがロシアに科す経済制裁への不参加など多岐にわたりますが、私もまさかロシア(そして中国)の影響力がハマスにまで及んでいたとは考えてはいませんでした。
中ロともイスラエルとの良好な関係を築いていましたが、今回、それを断ち切りにかかったという見方もできます。
ただ、今、頭に血が上っているはずのイスラエル政府の高官たちは、不思議なことにロシアや中国への非難はあえて行っておらず、経済的な関係も切っていませんし、中ロもイスラエルの非難は行っていません。非常に不可解ですが、未確認情報ではこのロシアとイスラエルの微妙な距離は、水面下でネタニエフ首相とプーチン大統領がすり合わせた結果という話もあります(表立った話では10月7日以降両首脳が電話などを通じて話していないことになっていますが)。
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