世界各地で動く大規模戦争に発展しかねない案件
ただ今回のことで中ロが得たものは、国際世論の非難の矛先をウクライナ・台湾・ウイグルから、中東に向けさせることで、自国に向く直接的な非難や攻撃をかわす時間的猶予です。
特に欧米諸国の目とリソースが急遽、イスラエルとガザ地区に投入される状況を作り出すことで、ゼロにはならないですが、ウクライナにおいてロシアと対峙するためのリソースと関心が割かれたり、アメリカが主導する対中攻撃の強度と頻度が低下したりしていることが分かります。
実は中国自身は、台湾の統一を宿願としつつも、軍事侵攻を本気で行うつもりも、アメリカと戦うつもりもないようですが、「アメリカはウクライナが落ち着いたら、今度は中国に戦争をさせるように仕向けるつもりだ」と北京周辺では認識されているため、その時をできるだけ遅らせるか無くすための工作を今、世界中で行っていると聞いています。
そしてプーチン大統領を北京に迎え入れることで、欧米諸国に対するプレッシャーを高め、いろいろと想像させることで、時間稼ぎを行っていると思われます。もちろんウクライナへの対応の確認、台湾有事の際の協働オペレーションの内容の協議、そしてイスラエル・ハマス問題の落としどころなどについても認識を合わせておくという狙いもあるでしょう。
しかし、ロシア政府および情報機関も、実際には10月7日のタイミングでの一斉攻撃には驚いたそうですし、中国も同じく驚き、双方ともに、すでにハマスに取られた自国民の人質が殺されるという悲劇も経験していますが、不可解なのは、そのことがほとんど両国の国内メディアで報じられていないということです。
これは一体どういうことなのでしょうか?
正直、私にもわかりません。
ここまで4つほど可能なシナリオと考えうる結果について触れてみましたが、イスラエル・ハマス問題の解決の糸口が全く見えず、今日明日にもイスラエル軍によるガザ総攻撃が予想され、さらなる悲劇が生まれることが見えてきますが、私たちの関心と目がイスラエルとハマスの攻防と、ガザで引き続き起こる悲劇の惨状に向いている間に、世界各地では大規模戦争に発展しかねない案件が多数動いています。
ナゴルノカラバフを取り戻したアゼルバイジャンは、勢いに乗って、アルメニアを攻撃するという噂が高まり、実際、アルメニアとの国境に軍が集結しているという情報が入ってきています。
ロシアによる抑止力が全く機能していない中、アゼルバイジャンが行動に出た場合、アルメニアがアゼルバイジャンを押し返す力はないものと思われ、ここでもカギは欧米諸国による支援と後ろ盾になるのですが、どこもすでにウクライナ支援に疲弊し、中東で生まれ激化している紛争に掛かり切りであるため、アルメニアのために力を注ぐ余裕がないように思われます。
アゼルバイジャンの後ろ盾のトルコは、クルド人勢力の掃討には軍事力は使っていますが、その他の紛争においては、ドローン兵器の供与や軍事訓練などにコミットメントを限り、自らが戦闘の場に出てくることはありませんので、同胞でもあるアゼルバイジャンの戦いに対して何らかの助太刀をすることは大いに考えられます。
そこに最近、トルコ、アゼルバイジャンとも関係を強化しているカザフスタンが加わると、中東アジア・コーカサスの勢力図は大きく変わることになります。
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