麻生か、茂木か、萩生田か…岸田「年内解散なし」をリークした“真犯人”

 

政権支持率の低下に色めき立つ「ポスト岸田」を狙う面々

記事の出た10月9日の午前9時40分、公邸から官邸に到着した岸田首相は、待ち受けていた内閣記者会のメンバーに取り囲まれ、衆院解散に関する質問にこう
答えた。

「まずは経済対策、先送りできない課題一つ一つに一意専心取り組む。それ以外のことは考えていない」

報道を肯定することもできないし、否定したらしたで、またぞろ首相自ら「解散風」を煽っているなどと批判されかねない。とどのつまり「経済対策に集中」と言うほかなく、それを「年内解散はない」という記事に仕立て上げられて、既成事実化する。

岸田首相は記者の取材に応じた後、自民党本部に向かい、午前11時から約50分間、麻生副総裁、茂木幹事長、森山総務会長、萩生田政調会長、小渕選対委員長が居並ぶ会議に出席した。

そのさい、岸田首相はこう話したという。「解散するなど、ひと言も言っていない」

つい、口からこぼれ出た愚痴だったのか、“犯人捜し”のため探りを入れる目的があったのか。これに対する一座の反応は伝えられていないが、さぞかし気まずい空気が漂っていたことだろう。

岸田首相は来年秋の総裁選で再選されることを念願としている。そのためには、内閣支持率が高くなったタイミングで衆院を解散し、総選挙で圧勝して「岸田降ろし」を封じるのが近道であり、事実、岸田首相はその好機をうかがってきた。

今年5月のG7広島サミットは政権浮上のきっかけとなるはずだったが、案に相違して、それから支持率は低下の一途をたどり、いまやメディア各社の調査で軒並み30%を割っている。

こうした状況に、「ポスト岸田」を狙う面々が色めき立つのは当然のことである。だが如何せん、強力な候補者が見あたらないのも事実だ。「次の首相」世論調査で人気の高い河野太郎デジタル相はマイナ問題で失速ぎみだし、石破茂氏は党内基盤が弱すぎる。萩生田政調会長は所属する安倍派がまとまらず、統一教会問題がらみの悪イメージも払しょくできていない。

茂木幹事長も頭脳明晰のわりに、国民的人気はさっぱりで、党内の人望もパッとしない。とはいえ、麻生副総裁の後ろ盾があり、党内基盤という点では他のライバルをしのぐ。今度こそ自分が、と思っているはずだ。8月の党役員人事で幹事長に留任、総裁選への出馬意欲をいったん封印したものの、岸田首相とともに泥船で沈むのは御免だろう。いずれかの時点で、岸田首相に反旗を翻し、総裁選に打って出るチャンスを狙うのではないか。

そんな茂木氏にとって最悪のシナリオは、悪材料が積み重なって追い込まれた岸田首相が、一か八かの勝負に出て解散・総選挙を決行するケースだ。

いくら支持率が低下したといっても、対する野党は相変わらず弱いままである。大きく議席を減らすにせよ、自公で過半数の233議席(現有294)を超える可能性は十分ある。そうなると、岸田首相は国民の信任を得たと強引な解釈で党の重鎮らを説得し、総裁選を切り抜けるかもしれないのだ。

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