自分が置かれた状況を誰よりもよくわかっているはずの首相
今回、「年内の解散」を封じ込まれて、岸田首相の自由度はかなり狭まった。もちろん、来年1月召集の通常国会冒頭での解散もありうるが、それだと3月末までに来年度予算を成立させるためには、窮屈な国会日程となってしまう。4月以降では、通常国会会期末の6月解散が視野に入るが、これを逃せば総裁選前の解散はきわめて難しい。
支持率の急回復も考えにくい。なにしろ政権のイメージはいまや最悪だ。所得減税をするという甘い政策さえ、国民にそっぽを向かれる始末だし、政務三役の辞任ドミノ症候群も再発した。
税理士でありながら固定資産税を滞納して4回も差し押さえを食らった神田憲次衆院議員を、こともあろうに徴税の大元締めである財務省の副大臣に起用したというのは、タチの悪いブラックジョークとしか思えない。官邸の“身体検査”に問題はあるのだろうが、つまるところ任命権者である岸田首相の目が節穴だということになる。
岸田首相は先の内閣改造・党役員人事で、各派閥から出てくる要望を最大限受け入れて、党内の足場を固めたつもりだった。これにより、解散を見送っても総裁選を乗り切れると踏んでいたのではないか。
しかし、このままズルズルいけば、「選挙の顔」として不適格の烙印を押され、岸田首相を引きずり降ろす動きが出てくるのは避けられそうもない。前の総理、菅義偉氏の場合も、総裁選間近のタイミングで衆院解散をもくろんだが、党内からの圧力で阻止され、急速に求心力を失って退陣した。
岸田首相は党人事の刷新を旗印に「菅降ろし」の先頭に立ち、政権を奪った当人である。それだけに、いま自分が置かれた状況を誰よりもよくわかっているはずだ。うすら笑いを浮かべ落ち着き払っているように見せているのは、内心の乱れを覆い隠すためなのかもしれない。
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image by: 首相官邸