「民主の女神」周庭さんカナダに亡命。それでも恐れる中国共産党の追手

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12月3日にSNSを通じ、カナダへの亡命を宣言した香港の民主活動家・周庭さん。日本でも「民主の女神」として知られる彼女の決断は、各国のメディアで大きく伝えられました。このニュースを取り上げているのは、国際関係ジャーナリストの北野幸伯さん。北野さんはメルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で今回、周庭さんが亡命を余儀なくされた理由を紹介するとともに、自由がいかに大切で、そして脆いものであるかを力説しています。

「周庭さんカナダに亡命」で思うこと

全世界のRPE読者の皆様、こんにちは!北野です。

香港で「民主の女神」と呼ばれ、日本でも有名な周庭さん。カナダに亡命するそうです。映像はこちら。

カナダに“亡命”活動家・周庭さん 香港警察当局は出頭呼びかけ

「私はただ自由に生きたいと思っています」「香港には生涯戻らないと決めた」そうです。

香港といえば、2019年に100万人デモ、200万人デモがありました。香港の人口は、約750万人。200万人デモということは、3.75人に1人が参加したことになります。

2019年、香港には、少なくともデモをする自由がありました。しかし、2020年、すべてが変わってしまいます。「香港国家安全維持法」が2020年6月に成立したのです。この法律について『アムネスティ・インターナショナル』2021年7月1日。

国安法は、中国の全国人民代表大会常務委員会において全会一致で可決され、香港での議論がないまま、昨年6月30日、成立・施行された。同法は、国家分裂、国家転覆、テロ、外国勢力と共謀して国家の安全に危害を及ぼす行為を取り締まる。

 

中国政府の方針に沿った「国家の安全」の定義はあまりにも広範で、明確さに欠け、何をしたら処罰されるのかもわからず、表現の自由、平和的な集会、結社といった人権の制限や政府批判や政治的な反対勢力の抑圧に利用されている。

 

国安法は犯罪定義があいまいで、恣意的に適用されるため、いつ、どういう場合に違法になるのかを知ることは事実上不可能で、市民の間では、施行当初から当局への警戒心が広がっていた。

いろいろありますが、要するに、

  • 習近平を批判する言動
  • 共産党を批判する言動

はダメということですね。新聞、テレビ、雑誌、SNS、デモなどなどで、習近平と共産党を批判するなと。

周庭さんは2020年8月、国家安全維持法違反の容疑で逮捕され、禁固10ヵ月の刑になりました。2021年6月に出所した後、反政府的言動はやめています。

なぜ彼女は、カナダへの亡命を決めたのでしょうか?『産経新聞』12月4日付。

周氏はSNSで、出所後も再び警察に逮捕されるのではないか-とおびえる日々が続いたと明かした。医師の診断で、パニック障害や心的外傷後ストレス障害(PTSD)、鬱(うつ)病であることが分かったという。

 

今年に入り、このままじっとしているより外国に留学したいと考え、カナダの大学院への進学を決めた。しかしパスポートは当局に没収されたままで、海外渡航できない状態が続いていた。

 

このため、香港警察の国安部門に申請すると、政治活動に再びかかわらないことなどを約束する書面の提出を求められた。

 

さらにパスポートを返却する条件として、国安担当者とともに中国本土の深センに行くことも要求された。周氏は8月、5人の国安担当者と深センに向かい、展覧会で中国共産党や歴代指導者の業績を見学させられた。その後、「祖国の偉大な発展を理解させてくれた警察に感謝します」との文書を書かされたという。

 

こうして9月からトロントでの生活を始めた周氏は今月末、香港に戻るつもりで航空券も購入していた。警察への報告義務があったためだ。しかし香港に戻らないことを決めた。周氏は産経新聞の取材に「香港の状況や自らの安全、健康などを考慮した。とてもつらい決断だった」と語った。

周庭さん、カナダに逃げてよかったと思います。

しかし、中共の怖さ。「カナダにいるから安心」とは思えないのだそうです。彼女は産経新聞に、「民主化活動を再開するかまだ決めていない。カナダに中国の秘密警察が置かれていると報じられている。外国にいても身の安全がとても心配だ」と語っています。カナダにいても、「中国の秘密警察が私を捕まえにくるのではないか」とおびえているのでしょう。哀れです。

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