「住民移住・インフラ放棄」は机上の空論だ
まず、こうした地区を通る道路ですが、半島周回路の「国道249号線」であり、これを補完する「県道28号線」です。その被害は甚大です。ですから修復には大変な費用と労力がかかります。
ですが、例えば今回ネット論壇に溢れているように「コスパが悪いからインフラの修復はしないで、住民は移住してもらう」という選択は恐らく不可能だと思います。
理由は非常に簡単です。国道249号と、県道28号を放棄するということは、能登半島の半島周回路を放棄することになります。ということは、有史以来日本のある意味では文化や社会生活のルーツであった旧能登国の統治を放棄することになります。
これは国のかたちの崩壊を招く判断であり、そもそもあり得ないのではないかと思います。
仮にこの2本の道路を放棄する、そして海岸線の中小規模集落も放棄して住民は都市圏に移動させるということになりますと、この地域の独特の産業、習俗、文化は消滅します。これは日本という国のたぶん根幹に関わる何かを放棄することになるのだと思います。
同時にこの海岸線は安全保障上の意味合いがあります。この地域を全く放棄して、住民の人口がなく、半島周回の自動車道も寸断されるということになりますと、人間を含めた生態系は崩壊します。
同時に万が一の外敵の侵入を容易に許すということにもなりかねません。沿海州や、北朝鮮の東海岸から至近のこの海岸線が無防備だということになると、安全保障上の「抜け穴」となってしまいます。
ですから、周回路の再建は恐らくマストですし、沿岸の中規模集落の維持というのも、国策としてマストなのだと思います。とにかく、現在の孤立集落は北部海岸に集中しているということは、多くの判断をする上で前提になる情報ですが、これが共有されていないのは良くありません。
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