能登地震「デマと善意の真実」なぜ保守も左派もSNSで誤解と曲解を重ねたのか?

 

「自衛隊批判」という罪深すぎる勘違い

3番目は、寒冷な気候という問題です。能登は海流の関係で、そうは簡単に極寒にはなりません。通常は最低気温でマイナス1から2度程度です。但し、寒気の吹き出しが強まると話は別で、マイナス4から5度という厳しい低温の風が吹き付けて、場合によっては雷鳴とともに豪雪に襲われる土地柄でもあります。

更に言えば被災が1月1日ということで、一年で最も寒さの厳しい季節を迎えているわけです。

この点では、3月11日に起きた東日本大震災とは違います。確かに東日本の震災の際にも、被災直後に厳しい冷え込みとなり降雪が被災者を襲いました。ですが、今回はこれから2ヶ月近くの期間、厳しい冷え込みと吹雪、場合によっては相当量の積雪と戦わなくてはならないのです。

このことは非常に大きな問題であり、この震災への対応を難しくしています。初動において、台湾からレスキュー隊による支援の申し出がありましたし、米軍の申し出もありました。

ですが、雪を経験したことのない台湾の方をこの地に、この時期に投入することは全く非現実的です。米軍も同様です。世界有数の豪雪地帯への備えがあるとは考えられないからです。

また、被災直後の初動において、自衛隊の派遣数が5000名規模であり、熊本地震の4分の1にも満たないという批判がありましたが、これも同じ理由です。

寒冷地の経験があるだけでなく、寒冷地で動ける装備と訓練を経た人材しか、戦力にならないのです。

ボランティアの問題も同様で、石川県庁がかなり強く「お断り」をし続けているのも、寒冷地に慣れない人材には余りにも厳しすぎる環境があるからだと思います。

この3点、孤立集落が北の海岸線に集中しており、この地域の復興は放棄できないこと、漁業の再建が重要だが困難を伴うであること、全体が厳しい寒冷地であり、しかも最悪の季節の被災だということ、こうした点は、あらゆる議論の前提として考慮すべきです。

その上で全体像を把握して、当面の対策を進めるという点では、県庁も自衛隊もやるべきこと、できることを必死に進めていると思います。

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