失われた笑いの「秩序」を取り戻せるか
ところが、NSC出身で、師匠不在のまま初めてスターの座にまで駆け上った漫才師・松本人志は、その社会学的構造を、彼自身のネタを通して、そして彼自身の存在を通して完全に破壊してしまったのです。
そしてその挙げ句の果ての最終帰結が、この文春スキャンダルなのだ――とすれば、まさに上岡龍太郎が主張していた話を、裏側から実証して見せたのだと言うことができるでしょう。
あれだけの破壊行為は、若いからこそ笑えたのです。
今のあの茶髪で筋肉ムキムキな初老の松本人志を見ても、何やら不快に感じてしまうことすらあり、かつてのように爆発的に笑い転げることはできなくなってしまっているのです。
我々は失われた「笑い」における秩序を、取り戻さねばなりません。
笑いは社会秩序を破壊する強力な暴力としても機能するものですが、ほころび始めた社会の秩序を回復するための強力な治療薬としても強力な機能を発揮する筈なのですから。(この記事はメルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論』2024年1月30号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ)
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image by: 松本人志 公式X(旧ツイッター)