バイデン困惑。衝撃の「米兵戦死」に米国内で高まるイランへの徹底報復の声

 

中東地域に安定をもたらす「大連立」は実現可能か

しかし、現在、イスラエルとハマスの案件の交渉においては、カタールとエジプトが行っているものも含め、あまりイランネタは出されていません。

サウジアラビア王国やUAEなどと同じく、イランとの付き合い方には苦心している両国ですが、まずはイスラエル・ガザにおける火を消し、デリケートな地域に安定を取り戻すことに専念し、より大きな悲劇を避けるために、他のアラブ諸国に対しても紛争の飛び火を防ぐための予防外交を展開しています。

またその過程において、イスラエルを説得するにはアメリカを関与させるべきとの考えから、協議にアメリカを招いていますが、これも今後、またアメリカ政府が露骨なイスラエル支持を表明したら、アメリカの関与は地域の安定のためには諸刃の剣として機能してしまうかもしれません。

実際に今回の案件でも、アメリカの代表が常に上から目線でものを言い、カタールとエジプトに命令・指示するような態度を取り続けることには、両国ともうんざりしてきているらしく、今後、イスラエル絡みの案件でひと悶着あるかもしれません。

あまりすぐには実現しそうにありませんが、もしスンニ派・シーア派の壁を越えてイランとサウジアラビア王国やUAE、カタールやエジプト、ヨルダンなどのアラビア半島の国々とペルシャ湾沿岸諸国がgrand coalitionでも形成し、独自の外交・経済協力体制を築いて、イスラエルと、その背後にいるアメリカと渡り合うようになってきたら、国際社会における新たな分断線がアラビア半島または東地中海に引かれるかもしれません。

その際、主役の座を射止めることになるのが、トルコでありイランであり、奇跡が起きるとしたら、この輪にイスラエルも加わることになれば、地域に安定が実現するかもしれません。

この“地域の安定”に貢献する立場に自らを置こうとしているのが、東地中海からアラブ諸国、コーカサス、中央アジアの真ん中の位置にいるトルコです。

その触手は、現在、平和条約締結がままならないアゼルバイジャンとアルメニアの緊張状態にも伸びていますし、“東西の文明の十字路”であり、石油・天然ガスなどのエネルギー資源に恵まれ、カスピ海と並ぶ大陸間の重要な交易ルートを確保し、そしてロシアからカザフスタンを経由し、インドまで延ばすコーカサス・南アジア経済回廊にも、イランと共に関わってくることを狙っているようです――(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2024年2月2日号より一部抜粋。続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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