折半出資は「勝ちパターン」も。なぜKDDIはローソンの経営参画を決めたのか?

Tokyo,,Japan,-,March,3,,2022:,Branch,Of,The,Japanese
 

KDDIが5000億円近い巨費を投じ、ローソンの共同経営に乗り出すことを発表。この知らせに、なぜ通信会社が流通小売業の経営に参画するのかと、疑問の声もあがりました。しかし、これがKDDIの「勝ちパターン」で「王道パターン」と指摘するのは、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さん。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、過去にもKDDIが折半出資で成功してきた例を紹介。ローソンが今後の課題とするデリバリーサービスにおいても、ほぼ折半出資している「menu」との連携が見込めると期待しています。

KDDIが三菱商事とローソンを共同経営──商社との折半出資はKDDIの勝ちパターン?

2月6日、KDDIと三菱商事はローソン株のTOBを行い、出資比率50:50で共同経営していくことを発表した。

一般紙などでは「通信と小売りのシナジーが見えない」と指摘しているが、発表会終了後の囲みで高橋社長は「海外で始まったものを、日本に持ってきて、日本の付加価値をつけて、すごく良くしてグローバルに持っていく。これが僕らの目指している姿」と語る。

海外発祥のローソンを東南アジアを中心にグローバル展開していくことを「絶対にやりたい」(高橋社長)ということで、最終的には海外拠点のあるKDDIが通信やテクノロジー、人的支援をすることで、ローソンのグローバル展開を狙っていくようだ。

今回の資本業務提携話、過去の例を見るとKDDIの「王道パターン」という気がしてならない。KDDIはこれまでも50:50の出資比率で異業種とタッグを組み、成功してきた実績がある。例えば、2008年に三菱UFJ銀行(当時)とKDDIが折半で出資して設立したのが「じぶん銀行」(現auじぶん銀行)だ。

2012年にはケーブルテレビのジュピターテレコム(J:COM)を住友商事とともに共同買収すると発表。さらにJ:COMがKDDI傘下でCATV2位のジャパンケーブルネット株式会社(JCN)を統合し、住友商事が50%、KDDIが50%という共同経営体制の新生J:COMが誕生したのだった。銀行や商社とタッグを組みつつ、その後、主導権を上手いこと握っていくというのはKDDIの成功体験になりつつあるのだ。

三菱商事の中西勝也社長は「三菱商事グループの上流から流している食品デリバリーなど、いろいろなところでアドオンはしてきたが、これ以上追加でサポートできることについて悩んでいた」と語る。三菱商事として、ローソンに対して、これ以上、新しいサポートをするのが難しくなるなか、KDDIとの話は渡りに船ということだったのだろう。

囲みのなかで、ローソンの竹増貞信社長が「ローソンから最短15分でお届けするデリバリーサービスは中期経営計画のひとつの山にしていきたい。ただ、現在は、店舗の在庫との連携がまだ進んでおらず、3割ぐらい欠品している状態。そのため、マーケティング活動がまったくできていない。

これは4月に在庫管理システムと連携し、欠品がほぼなくなるような状態になる。グッとアクセルを踏んでいきたい」と語っていた。ここではっと思いついたのが、デリバリーサービス「menu」だ。出前館やUber Eatsに比べるとかなりマイナーだが、menuは昨年4月にKDDIが50.6%、レアゾンが49.4%の株式を保有するジョイントベンチャーになっている。

ローソンとしては自社で展開しつつ、menuのプラットフォームを活用すれば、一気にクイックコマースを強化することが可能だ。ローソンとしてはDXを迅速に進めるという点においてKDDIとは組めたことは相当、プラスになるのではないだろうか。

この記事の著者・石川温さんのメルマガ

初月無料で読む

image by: Ned Snowman / shutterstock.com

石川 温この著者の記事一覧

日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 石川温の「スマホ業界新聞」 』

【著者】 石川 温 【月額】 初月無料!月額550円(税込) 【発行周期】 毎月 第1土曜日・第2土曜日・第3土曜日・第4土曜日(年末年始を除く) 発行予定

print
いま読まれてます

  • 折半出資は「勝ちパターン」も。なぜKDDIはローソンの経営参画を決めたのか?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け