日本がまた敗戦国に?元陸自総監「台湾有事シナリオ」の呆れた空論ぶり…沖縄は再び「捨て石」にされるのか

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『文藝春秋』4月号に掲載された、本松敬史氏(元陸上自衛隊西部方面総監)の台湾有事シナリオ。そのことごとくを「机上の空論」と喝破するのはジャーナリストの高野孟氏だ。「台湾有事は日本有事」の勇ましいスローガンに導かれ、我が国は再び“敗戦”への道を突き進んでいるのか。法解釈から戦闘想定、住民の避難計画まで、ご都合主義シナリオの目にあまるデタラメぶりを詳しく見ていく。(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:何を言っているのか分からない自衛隊OBの台湾有事論。『文藝春秋』4月号特集の呆れた内容

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

自衛隊OB・本松敬史のデタラメ台湾危機シナリオ

『文藝春秋』4月号の巻頭特集は「日本地図から『新しい戦前』を考える」で、マイク・ポンペオ=前米国務長官、本松敬史=元陸自西部方面総監、李喜明=元台湾軍参謀総長、劉明福=中国国防大学教授がそれぞれの視点から「台湾有事は日本有事」と言われる危機シナリオについて論じている。

そのどれもが大いに問題がある論稿で、いちいちすべてを指摘したいところだが、とりあえずここでは自衛隊OBの本松の混乱に満ちた言説を取り上げる。

安倍・麻生の軽率なメッセージを“常識”扱い

本松は要旨次のように言う。

▼安倍晋三元首相が言い出した「台湾有事は日本有事」という言葉はなかば“常識”と化している。

▼が、日本側は「中国が台湾に侵攻すれば、隣接する日本が巻き込まれる危険性がある」という理解であるのに対し、台湾側は「我が事として日本が助けてくれる」と、180度異なった理解である。日本側にも台湾防衛のために自衛隊が協力すべきだと考えている方がいるかもしれない。

▼しかしこうした認識は“現実”からかけ離れている。台湾防衛のために自衛隊を派遣することはそもそも法的にできないからである。

▼台湾とは正式な国交がないため、「日本台湾交流協会」台北事務所に元自衛官と文官が常駐しているだけで、台湾軍と自衛隊の直接交流はなされていない……。

本松は、「台湾有事は日本有事」はなかば常識化していると言うが、彼のこの文章そのものがすでにその“常識”の怪しさを物語っている。

第1に、安倍と麻生太郎副総裁(当時)が21年3月のデービッドソン=前インド太平洋軍司令官の「6年以内に中国が台湾に侵攻する」との議会証言に悪乗りして言い出した「台湾有事は日本有事」発言だが、定義もなく戦略的な検討もない無責任な軽口のようなものであったため、台湾側には台湾有事に際して自衛隊が参戦・加勢してくれるかの誤った期待を抱かせ、また中国側にはいざという場合には米軍だけでなく自衛隊をも最初から敵として計算に入れて作戦を立てなければならないかの過剰な対日警戒感を植え付けることになった。

国家と国民の安全を危険に晒す軽率極まりない対外的なメッセージであった。

「日本が自衛隊を派遣できない理由」を勘違い

第2に、日本が台湾防衛のために自衛隊を派遣することがそもそもできないというのはその通りだが、その理由を「法的に」と言うのは間違いで、「憲法上」と言わなければならない。

第3に、本松がその「法的に」の説明として台湾との間に国交がなく、自衛隊と台湾軍の直接交流がないことを述べているのは全くのピント外れ。仮に国交があったとしてもそれだけで他国の防衛に自衛隊を派遣することは、日本国憲法上はもちろん国際法上も、できない

相互防衛条約を結んでいれば「台湾有事は日本有事」として自衛隊を送れるけれども、「日本有事は台湾有事」でもあるので、例えばロシアや北朝鮮が日本を攻撃した場合は台湾軍が来援すると盟約し合わなければならない。

それには中国との国交を断絶して台湾と国交を結び、さらに日本国憲法違反を侵してそのような軍事同盟を結ばなければならないので、現実には不可能である。

第4に、それなのに、米軍と一緒になって台湾有事に対処するシミュレーションを盛んにやっているのは、「米軍の背中に隠れてやれば大丈夫だろう」という奴隷根性の現れに過ぎない。

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