現代社会に欠かせないものとなった通信網とGPS。私たちが想像する以上にさまざまなものと結びついているため、業界では万一の際のバックアップへの問題意識が高くなっているようです。なかでも関心事となっているのが、「台湾有事」の際の情報ネットワークへの侵入や妨害で、とりわけGPSへの妨害が懸念されているのだそう。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんが、GPSへの依存度が高まっている実態と、バックアップ手段や代替手段構築の重要度について解説しています。
通信業界キーマンが懸念する「台湾有事」──電力、GPS、ネットへの侵略にどう対応するか
今週、たまたま複数の会社の幹部もしくは幹部経験者に話を聞く機会があったのだが、共通した話題として上がったのが「台湾有事への備え」であった。日本の通信業界としても来るべき台湾有事に備えて、やるべき事があるという危機意識を持っていたのが印象的であった。
NTTが手がける「IOWN」は超リアルタイムに通信できるという特長がある。遠隔地にバックアップとしてサーバーを持っていたとしても、IOWNでつなげば超リアルタイムにデータを同期できるので、片方のサーバーに万が一のことがあっても、ほぼリアルタイムにバックアップがとられているので、データの復旧が容易だというメリットがあるという。
仮に台湾で何が起こっても、別の国にバックアップサーバーがあり、IOWNでつながれていれば、データの復旧が可能となる。NTTでは台湾・中華電信とIOWNによる国際ネットワーク接続の実現に向けた基本合意書を締結しているが、背景には有事に備えた危機意識が台湾にはあるようだ。
今後、有事が起きた際には軍事的に武力で攻め込むよりも、情報ネットワークに侵入や妨害を加えた方が、よっぽど効果が大きいというものだ。人命を犠牲にすることなく、相手国に大きなダメージを与える事が可能だ。
台湾有事の際に懸念されているのがインターネット網だけでなく、GPSへの妨害だとされている。GPSの電波に対して、ジャミング、いわゆる電波によって妨害を与えれば、まずカーナビなどの位置情報サービスが大きな影響を受ける。
また、TD-LTEなどGPSによって同期を取っているような通信機器も壊滅的なダメージを受けるとされている。つまり、GPSを使えなくすれば、結果としてスマートフォンの通信も使えなくなるというわけだ。
また、最近では電力網もGPSによって管理されているところもあるようだ。GPSにジャミングすることで通信だけでなく、電力網も脅かすことができる。ただ、最近ではGPS網に依存せずに位置情報を測位するような技術なども出始めている。
確かにあらゆるものが通信、さらにはGPSに依存しすぎている感があるだけに、いまのうちにGPSではない位置情報システムの確立が必要だろう。
昨今、災害時における通信網の代替手段として、スターリンクが脚光を浴びているが、ひとつの技術に依存しすぎるのも危険だ。あらゆる危機に備えて、様々なバックアップ手段を構築しておくのが望ましいだろう。
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