プーチンは戦争が続く限り権力を維持できる「核兵器」を本当に使うのか?独裁者に見当たらぬ停戦の理由

 

冷めきってしまったゼレンスキー大統領への熱狂

大事なのは【ゼレンスキー大統領の立ち位置と役割をどうするか】です。

これまでの2年ちょっと、ゼレンスキー大統領はロシアによる不条理に対して真っ向から戦うウクライナ抵抗の顔という役割を演じてきたと言えます。

ロシアによる侵攻直後は、ウクライナへのシンパシーとロシアの行動を許すべきではないという声と心理のおかげで英雄のように扱われてきましたが、戦争が膠着状態に入り、かつ国内での汚職問題がクローズアップされ、かつ政府内の権力争いが表面化してくると、国際的な後押しとゼレンスキー大統領への熱狂は冷めたといえます。

そこにイスラエルとハマスの戦いが始まり、国際的な関心はどちらかというと、中東のこれからに向かうようになったのは、ウクライナとゼレンスキー大統領にとっては不幸だったと言わざるを得ないでしょう。

国際的な関心の低下と厭戦気分、そして支援疲れに加えて欧米諸国内の国内問題が噴出し、対ウクライナ支援は遅延し、かつ縮小される流れになってしまいました。

しかし、ゼレンスキー大統領の役割と露出は変わるどころか増え、戦時大統領が交戦中の自国をこんなに留守にしていいのか?という疑問が出るほど、世界各国を回り、支援の拡大と継続、そして迅速な実施を訴えかけてきました(今はイタリアのプーリアにきてG7サミットにお邪魔するようです)。

その影で腹心として飛び回り、ウクライナの外交をリードしていたクレバ外相の露出が減少しており、ゼレンスキー大統領が出ずっぱりの役者のように孤軍奮闘しているイメージがどんどん強くなっているのがこのところの状況です(あくまでも私の印象です)。

しかし、以前のような熱狂はゼレンスキー大統領には与えられず、先週号でも触れたように、アジア太平洋では場違い感満載なイメージを与えてしまい、しらけムードを拡大したように思われます。

【関連】プーチンが密かに狙う「ウクライナに親ロシア政権を誕生させたら終戦」という最悪シナリオ

その背景には【5月末で国民から負託された大統領としての信認と任期は終了しており、彼のパフォーマンスは国民の正当な審判を受けていない】という批判と懸念が存在します。

戦時中ゆえに非常事態宣言によって大統領選挙が無期延期されていますが、それはゼレンスキー大統領から一方的に国民に通告されたものであり、国民から要請されたものではないというのが、ロシア政府による皮肉は横に置いておくとしても、欧米諸国とその仲間たちを除く大多数の国々の認識のようです。

シャングリラ・ダイアローグ中の“ある首脳・閣僚”の発言では「彼はどのような法的基盤と権限に則って大統領として振舞っているのか」という疑問が呈されたのは、多くの国が抱くunspokenな問いのようです。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月無料で読む

print

  • プーチンは戦争が続く限り権力を維持できる「核兵器」を本当に使うのか?独裁者に見当たらぬ停戦の理由
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け