人口、経済力、軍事力は世界一に。それでもインドが「世界の覇権国家」になることができない理由

 

そこで、「平等より自由を重視した」のがアメリカ合衆国。「自由より平等を重視した」のがソ連だったのです。

アメリカは、「自由の国」と呼ばれますが、「平等な国」とは呼ばれません。「自由の国」であるために、言論、信教、結社の自由などが保証されています。一方、結果はどうあれソ連が目指したのは、「万民平等の世界」でした。つまり、アメリカにもソ連にも、「一国を越える世界観、思想」が存在していたのです。

「万民平等」を掲げるソ連の思想は、1917年のロシア革命後、急速に広がっていきました。なぜでしょうか?日本や欧米、いや世界中で、労働環境がひどかったからです。言ってみれば、「全世界総ブラック企業の時代」です。日本や欧米の人々は、「俺たちをこきつかう資本家を打倒して、労働者の国を作りたい!」と思った。

一方当時、世界のほとんどは、欧米列強の植民地でした。そしてソ連は、欧米列強に対抗するために、「植民地解放」も掲げていました。それで、ソ連の影響力は、おどろくべきスピードで拡大していったのです。一方アメリカも、「自由」、それを実現するための民主主義、資本主義を世界に広げていきました。

アメリカにもソ連にも、世界に受け入れられる可能性がある世界観、思想がありました。だから、両国は、世界を二分できたのです。

1991年12月、ソ連崩壊で、共産主義はほぼ死にました。

今の世界を見渡すと、世界観、思想をもっているのは、アメリカと欧州だけです。彼らは、自由、民主主義、人権などを掲げています。

その他の国々は、どうでしょうか?

中国は、とっくに共産主義を捨て去り、今は「中国の夢」を掲げる「ナショナリズム国家」です。ロシアも、とっくに共産主義を捨て去り、今は「ロシア世界」(=ルースキーミール)を掲げる「ナショナリズム国家」です。

ロシアが、超大国、覇権国家に返り咲けないのは、わかるでしょう。しかし、中国も超大国、世界的覇権国家になれません。

もちろん、「国家ライフサイクルで低成長の成熟期に入ったこと」とか「人口急減時代に入ったこと」なども、大きな理由です。それ以上に、「中国には超大国、世界覇権国家になるための世界観、思想が存在しない」のです。

ちなみにアメリカも、あまり変わりません。アメリカ、特にトランプさんは、「アメリカ・ファースト」を掲げる「ナショナリスト」です。「アメリカ第一主義」というのは、他の国に受け入れられない主義、思想です。だからトランプさんは、知ってか知らずか、「自ら覇権を手放そうとしている」のです。

では、インドはどうでしょうか?インドのモディさんは、「ヒンズー教」を優遇する「インド・ナショナリスト」です。だから、インドは、人口、経済力、軍事力が世界一になっても、「超大国、世界覇権国家」になれないのです。

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