米大統領選で日本に迫る“もしトラ”の危機。英誌『エコノミスト』が挙げた「大ボケのバイデンよりマシ」な民主党候補者の名前

 

『ニューヨーク・タイムズ』が撤退を勧告した衝撃

『ニューヨーク・タイムズ』は討論会の翌日28日付で「この国を救うため、バイデン大統領は選挙戦から離脱すべきである」と題した社説を掲げた。

同紙は、単に米国きっての有力紙というにとどまらず、選挙の度ごとに公然と民主党支持の立場を表明し、同党のあるべき方向について大所高所からの提言や苦言を呈する、言わばご意見番のような存在であって、そこが、前夜の討論会の翌朝早々に、個人名ではなく論説委員室(エディトリアル・ボード)の総意として、バイデンに選挙戦からの撤退を勧告したことの衝撃は大きい。さすがに、格調ある堂々たる文章だが、言っていることの中身は厳しい。要点は……、

▼木曜日の討論会では、バイデンは4年前と同じ人ではなかった。……彼は自分が2期目に達成したいことを説明しようと奮闘した。彼はトランプの挑発を跳ね返そうと奮闘した。彼はトランプの嘘、失敗、恐るべき計画の責任を追及すべく奮闘した。……しかし、偉大なる公職者であるバイデンが今〔公共の利益のために〕成し得ることは、自分が再選のための選挙戦を続けるつもりがないことを宣言することだけである〔ことが明らかになった〕。

▼選挙戦のこの終盤になって、新しい候補者を求めるという決断は軽々にできることではない。しかし、我が国の価値と制度を破壊しようとするトランプの挑戦の大規模さと深刻さ、そしてそれと対決するバイデンの力不足を思えば、その決断はやむを得ない。

▼思い出して欲しいのだが、この異例の時期の候補者討論にトランプを連れ込んだのはバイデンであって、彼がルールも日取りも決めた。彼は前々から自分の精神的能力に関して公けに懸念が出ていること知っていて、それに応えなければならないと思ってそうした。彼は自分で課した試練に失敗したのである。

▼トランプ第2期という危険が差し迫った今、それを打ち破るために民主党が成し得る最も明瞭な道筋は、「バイデンが選挙戦を続けるのは無理でありそれに代わってトランプを負かすことのできる誰かを選抜する手続きに入らなければならない」という本当のことを、公に宣言することである。……

いい加減に「パートナー」を選んだ訳がないバイデン

NYタイムズの社説は、バイデンの代わりを誰にすべきかには触れていない。が、同紙7月2日付オピニオン欄ではライディア・ポルグリーンの論説で「ハリス大統領候補は今のところ(right now)悪くない(pretty good)のでは」と言わせている。

▼討論会の直後、CNNにカマラ・ハリスが登場し、滅多撃ちにしようとするアンダーソン・クーパーの詰問に冷静かつ順序立てた話ぶりで答えているのを見て、バイデンが自ら陥った窮境を脱するには彼女に頭を下げて自分の代わりになってくれるようお願いするしかないと確信した。

▼そもそも2020年にバイデンがハリスを副大統領候補に選んだのは、普通の意味ではなく、すでにその時、本人が任期途中で執務できなくなる可能性があり得ることを考慮し、その場合に後継者になるに相応しい者として彼女を選んだのだった。

▼もしハリスが大統領になれば、最初の女性大統領になる。バラク・オバマは最初の黒人大統領となったが、彼女は最終的に最も高いガラスの天井を破るという最も困難な仕事を成し遂げることになる。私としては、女性大統領が生まれるとすれば、こういう奇妙で変則的なプロセスではなく、もっと公明正大な環境の下であって欲しいと希求してはいるのだが。……

私も、米マスコミがことさらにハリスを悪く言うのを前々から「異常だな」と思っていて、その陰にカラードの女性に対する二重の差別意識が働いていないかという疑いを抱いていた。しかし、それを判断する手段がないので、今でも確かなことは言えないのだが、バイデンほどの老練の政治家が、しかもボケが始まる前の4年前に、そうそういい加減にパートナーを選んだ訳がないので、「やらしてみたらいいじゃないか、トランプよりマシだろうが」という直感的な見方を保っていて、ポルグリーンに賛成である。

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