アメリカとEUから排除されても止まらない。中国のEV企業BYDの成長速度

 

BYDの成功は、実のところ政策という上昇気流と切り離して考えられない。もちろん企業が蓄積した高い技術や製品の性能が優れていることは大前提だ。その上で政策を読む鋭い嗅覚を備えているのだ。加えて小回りの利く企業体質である。

その二つの要素が凝縮されたパフォーマンスがある。新型コロナウイルス感染症の拡大初期、バッテリーメーカーでEVに進出して20年にも満たないBYDが、医療用のマスクの大量生産を始め、世界最大のマスクメーカーになって周囲を驚かせたことだ。

いま、あらためて考えてみれば、これも確かに時代の風と政策という追い風をつかんだ成功だったと言わざるを得ない。BYDはそれを正確にとらえたのである。逆説的だが、そのBYDがいまEV生産に疑問を感じていないのであれば、政策の追い風は確かにEVに吹いているのだろう。

習近平政権はデジタル経済の育成により、不動産市況の低迷という穴を埋めようとしている。EVを放棄する理由はない。中国が本気でEV化の推進を考えているのならば、たとえアメリカとEUがそろって中国製EVを排除したとしても世界の趨勢は変わらないという公算は高まる。なぜなら中国市場はいまや世界最大の自動車市場であり、中国のEVメーカーを包摂できる規模を備えているからだ。

むしろ外国の自動車メーカーにEVシフトを迫るマーケットパワーだといっても過言ではない。事実、欧米の自動車メーカーがEVの未来を悲観していないことは各社の動きからも見えてくる。とくにドイツの自動車メーカーは──(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2024年8月18日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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