党として出来ていない「政権を獲りに行く」という基本姿勢
野田が代表出馬を決めた理由の1つは、早ければ今秋、遅くとも来年10月までに行われる次期衆院選が「政権交代」を実現する絶好の機会であり、そうだとすると野党第一党の党首はある程度年齢が行っていて首相経験も持ち安定感のある野田が相応しいという「待望論」が党内にあるというのだが、本当か。
まず第1に、誰が代表になるにしても、それ以前に、党として「政権を獲りに行く」という基本姿勢が出来ていない。
今の衆議院定数は465人で、そのうち289人が小選挙区で、残りの176人が比例代表で選ばれる。過半数は233で、もし同党だけで過半数を得て単独政権を目指すのであれば最低でも233人の候補者を立て、しかし全員当選などあり得ないので、250を超え限りなく289全区で立てるくらいの勢いが必要だが、今年5月現在で確定している同党の立候補予定者は179人で、今秋までに「200人を目指す」という方針である。
単独で無理なら連立政権狙いとなる。左に翼を伸ばして共産、社民、れいわなどと組むか、右に寄って維新、国民民主と組むかが大きな分岐だが、数が勝負の連立では右に寄るのが有利に決まっている。とすると、立憲民主党内きっての保守派である野田の出番だというのが、例えば小沢一郎が野田を推している理由だろう。
衆院の議席配分の現状はこうなっている。
- 自民257+公明32=289
- 立憲99+共産10+れいわ3+社民0=112
- 立憲99+維新45+国民7+有志4 =155
次期衆院選で仮に自民党が55議席減の大敗を喫し、公明も2議席減だとすると、自民202+公明30=232で過半数割れ。その分がそっくり立憲+維新+国民+有志の方に回って来たとしても155+57=212、共産とれいわの13が首班指名でこちらの側に加わったとしても225でまだ届かず、ということは自民・公明にもっと大きく負けて貰わないと政権交代は実現しない。立憲の候補者が180人程度しかおらず、しかも維新・国民などと候補者一本化など選挙協力の合意がほとんど出来ていない現状では「夢のまた夢」みたいなことなのである。
従って、野田を代表に選んで維新・国民との連立政権を目指すという方策は、ほとんど冗談であって、小沢を含めてそのように考える人が多いのだとすると、立憲の劣化はかなり酷いということになる。
では枝野幸男だとどうなるのか。これはまた次の機会に考えることにしよう。
(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2024年8月26日号より一部抜粋・文中敬称略。ご興味をお持ちの方はご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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