「進次郎首相」初仕事への壮大な前フリか?長崎地裁「原爆体験者訴訟」で“不可思議判決”の理由

 

自分の「見せ方」をよく理解していた小泉純一郎

そして、第1次小泉政権がスタートした2週間後の5月11日、この国家賠償訴訟を審理していた熊本地裁は、大方が予想していた「国側勝訴」という既定路線を覆し「原告勝訴」との判決を下したのです。正確には「一部認容、一部棄却」でしたが、自分たちの勝訴を信じていた政府(厚労省と法務省)は焦りまくりました。そして、すぐに控訴の準備に入りました。そのため、原告団は支援者らとともに首相官邸前で座り込みを行なって抗議し「控訴断念」を訴えました。

すると、小泉純一郎はすぐに原告団との面会に応じ、5月23日、首相官邸で原告団の代表者と面会をしたのです。そして、わずか2日後の5月25日、小泉純一郎は自身の政治決断で高裁への控訴を断念し、その内容を明記した首相談話を発表しました。これによって熊本地裁の判決が確定したのです。

この裁判に注目していたあたしは、この時の小泉純一郎の英断に感動し、日本にも素晴らしいリーダーが現われたと確信したのです。しかし、この年の9月11日にアメリカで同時多発テロが発生すると、小泉純一郎は「テロ対策特措法」を成立させてまで米軍のアフガン侵攻に日本の自衛隊を参加させたのです。このあたりから、あたしは小泉純一郎に違和感を覚え始め、この人が「アメリカの飼犬」だったと気づくまでに、そう長い時間は掛かりませんでした。

政権発足直後というタイミングで、ハンセン病の患者による国家賠償訴訟の地裁判決が出たのは、小泉純一郎が「持ってる」ことの証明だったと思います。そして、厚労省と法務省を敵に回しても「控訴断念」を決断したのは、どうすれば国民にリーダーとしての資質をアピールできるか、誰よりも良く分かっていたからでしょう。

アメリカの戦争に自衛隊を派遣したことで批判の声が挙がって支持率が下がり始めると、自らが北朝鮮に乗り込んで派手に拉致被害者を連れ戻して来る。サスガは広告代理店に選挙対策を依頼するほどの人物です。自分の「見せ方」というものを良く理解しています。

そして、ここまでの流れを読めば、原告44人のうち15人だけしか被爆者に認定しなかった9月9日の長崎地裁の不可思議な判決の理由も見えて来たと思います。そう、次の自民党の総裁、つまり次の日本の首相が、就任直後に行なう口切の仕事として、長崎地裁に認定されなかった29人全員を政治決断で被爆者に認定し、速やかに被爆者手帳の交付などの救済措置を行なわせるという作戦です。少々頼りなく見える首相でも、これで新しい日本のリーダーとしての「掴み」はオッケーでしょう。

こんなことを言うと「陰謀論」だと一蹴されてしまいそうですが、残念なことに今の日本は、8年弱の第2次安倍政権の間に、各省庁の官僚たちは政権の言いなりになり、裁判所も危険な原発の再稼働停止訴訟などで地域住民の訴えを次々と棄却するという極めて政権寄りのスタンスに変わってしまいました。こうした事実と照らし合わせれば、今回の長崎地裁の不可思議な判決も「次の首相のための配慮」に見えて来ますし、一概に「陰謀論」では片付けられなくなると思います。そして、その真偽が分かるのが、今から数週間後なのです。

(『きっこのメルマガ』2024年9月18日号より一部抜粋・文中敬称略)

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