福岡の新築分譲マンションで、入居直後からバルコニーに体長5センチ大のワモンゴキブリが大量発生し、「床下に多くのゴミが残されている異常な状態」が明らかになった事案。その後、物件には多数のひび割れ(クラック)が発生していることまで発覚し、2月と5月の2度に渡ってジャーナリスト・山岡俊介氏が主宰する『アクセスジャーナル・メルマガ版』が詳しく報じてきた。本記事ではその続報をお届けする。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:本紙既報の福岡ゴキブリ・クラック大量発生マンション巡る管理組合VS施主──裁判(調停)へ(施主側弁護士辞任、怪文書まで飛び出す)
G大量発生は「アフターサービス対象外」、物件に多数ひび割れも
本紙では今年2月、5月と2度に渡り、福岡のマンション「サンライフ別院通り」(北九州市門司区。42戸。完成は2022年5月)の件を取り上げている。
施主は、福岡県の地場大手分譲マンション会社「タイヘイ」(北九州市小倉区。伊藤俊樹社長)。
2月の記事では、ゴキブリが大量発生していることを訴えても、タイヘイはマンション売買契約書のアフターサービス対象外といい、真摯に対応してくれないことを。5月の記事では、マンションに多数のひび割れ(クラック)が発生したが、本格的な検査もせず、しかし新築マンションでは乾燥して当然に発生し得る表面上のもので安全性に問題ないとして、これまたタイヘイはキチンと対応しないとの住民側の主張を紹介した。
本紙がこの件を取り上げるのは、詳細は後述するが、タイヘイ自身、下請け会社など外部の者任せで一切現場も見ないというこれほど露骨なケースは稀である上、途中からではあるが、管理組合が交渉(個別の住民ではなく、基本的に住民が結束して要求している)というケースも少ないと思われ、この手のトラブルは水面下で多数発生しているが大半は泣き寝入りのなか、住民側にとって何らかの参考になればとの思いもあってのことだ。
住人側とタイヘイがまずゴキブリ問題で対峙するようになったのが2022年7月。すでにそれから2年以上経過するが、この8月19日、管理組合は小倉簡易裁判所に調停申し立てを行った。
調停とは、裁判のように勝ち負けを決めるのではなく、話し合いによりお互いが合意することで紛争の解決を図る手続き。 調停手続では一般市民から選ばれた調停委員が、裁判官と共に紛争の解決に当たる。
「一度も現場を見に来ない」タイヘイ社に住民激怒
ただし、管理組合が調停を望んだわけではない。
8月9日、タイヘイはマンション住民の各ポストに「重要なお知らせ」とのタイトルが付いた文書を投函。その文書で、調停することを宣言していた。これを受け、ならば自分たちの方からと申し立てしたに過ぎない。
ここで重要なことは、管理組合が調停申立した際の書類の「紛争の要点」のところにも記されているように、「我々住民はタイヘイ社が一度も(現場を)見に来ることなく、管理組合との面談の約束もして貰えず、住民に対する説明会も開いて貰えず、不安でしかない状態です。事業主(売主)としての責任を果たす姿勢を見せて下さい」と記されているように、売ったら後はひたすら逃げるかのようなその無責任としか思えない姿勢だ。
しかも、8月9日のタイヘイが配布した「重要なお知らせ」の内容のなかには、ゴキブリの件では、大量のゴキブリを発見した住人の1人が、入居2日目にその事実をタイヘイに指摘し対処を要求したに過ぎないのに、「精神的に苦痛があるので補償を請求する」と言ったと虚偽の内容を記し、未だ事情をよく知らない住民に対し、住民の中に輩がいてイキナリ金銭を要求しているかのような印象操作をしている悪意性を感じないわけにはいかない。