日テレ系列局の幹部社員による寄付金横領などが発覚し、存続が危ぶまれていた『24時間テレビ』。結局、第47回となる今年は、テーマを“愛は地球を救うのか?”と疑問形に変更のうえ8/31~9/1に放送が強行されたのは周知のとおりです。ところが、同番組内でオンエアされた萩本欽一夫妻題材のドラマに関して、当の欽ちゃんの許可を得ず勝手に制作したのではとの疑惑が浮上。日テレには類似のトラブルで『セクシー田中さん』原作者を自殺に追い込んだ“前科”があり、各方面で物議を醸しています。芸能記者歴30年のベテランジャーナリスト・芋澤貞雄さんが解説します。
萩本欽一の許可なく放送!? 日テレ『24時間テレビ』内のスペシャルドラマが物議
にわかに信じられないような話が今、波紋を呼んでいます。
9月18日深夜の『TOKYO SPEAKEASY』(TOKYO FM)に出演した萩本欽一が、8月31日にオンエアされた『24時間テレビ47 愛は地球を救うのか?』内で放送された、2020年に亡くなった妻・澄子さんとのドラマに関して、日本テレビから正式なオファーもないまま、気が付いたら(ドラマを)やっていたと話したのです。
これは、『欽ちゃんのスミちゃん~萩本欽一を愛した女性~』というタイトルで、視聴率も15.6%を獲得したドラマのことです。
テレビ局がドラマを製作し、オンエアするのに、おそらくきっかけとなった『ありがとうだよ スミちゃん 欽ちゃんの愛妻物語』(文芸春秋社単行本)の著者である欽ちゃんに許可を取っていなかったなんてことがあるのでしょうか。
正式に、原作としてこの本のタイトルが明記されているわけではありませんが、ラジオで話していた“大将(萩本)の本を読んで感激して、ドラマにしたいって…”という経緯を察すると、“亡き妻へのラブレター”という副題のこの本が間違いなくきっかけになったものだと想定できます。
40年近い芸能記者生活でも前代未聞
私も芸能記者として40年近くになりますが、テレビ局がモデルと言っていい人物に事前に何も許可を得ずドラマを製作、オンエアするなんて、これまで1度も聞いたことがありません。
欽ちゃんの言うことに間違いがなければ、もちろん内容も、キャスティングの打ち合わせも、契約書等も一切何もないのでしょう。
“ドラマにしたいと言っていたディレクター”は『仮装大賞』の番組を手掛けるスタッフの後輩らしく、ラジオで欽ちゃんは、「真面目な顔して(ドラマを)やりたいんですって言ったら、そんな恥ずかしいことしないでくれよ!って絶対断ってるもん!」とまで話していました。
芸能界における“欽ちゃんの許可”の重み
実は、私がまだ、芸能界の右も左もわからないペーペーの芸能記者だった頃、在籍していた週刊誌の企画会議で、「表舞台に出ない、萩本欽一夫人の人となりを取材してみたい」と提案したことがありました。
東京・浅草の『東洋劇場』で踊り子をしていたという夫人のキャリアや、妻として欽ちゃんを支える彼女とは一体どのような女性なのかを知りたいと思ったからです。
これに編集部は、あたかも嘲笑するかのように冷酷に、「夫人の写真を撮れば、必ず裁判沙汰になるョ。欽ちゃんも夫人のことに関しては死に物狂いで噛み付いてくるから、それでもいいなら勝手にやればいい」と言い放ったものでした。
当時の芸能マスコミの間では、欽ちゃん夫人の存在はアンタッチャブルだったのですが、そんな事も全く知らなかった私に、百戦錬磨の先輩たちがこう言い放ったわけです。
そんな経緯があった私は、その27年後、NHKプレミアムで萩本澄子さんにスポットライトが当てられたドラマを見たときは非常に感慨無量だったことを憶えています。
『欽ちゃんの初恋』というタイトルのこのドラマを観ながら、番組スタッフはどうやって欽ちゃんを口説き落としたのか、気になって仕方がなかったことも…。
視聴率が獲りたい、自分たちの好きに撮りたい。日テレにセクシー田中さん事件の反省なし