ようやく見えた安倍政治の終焉。石破氏の総裁選勝利でギリギリ回避できた“嘘と開き直りの政治”への逆戻り

 

石破氏が人事で発した安倍政治への明確な決別宣言

自民党総裁選では、それこそ最後の最後で高市氏が大きく伸ばして、一回目の投票では、党員票、国会議員票共に石破氏を上回りましたが、決選投票では石破氏が僅差で逆転勝ちしました。決選投票前の両者の最終演説では、石破氏の方が聴衆の心を掴んだと思います。高市氏の演説は稚拙な印象で心に響くものが無く時間もオーバーして巻きを入れられていました。

決選投票では、小泉氏を支援していた菅氏のグループや、高市氏を嫌う岸田氏のグループなどから多くの議員票が石破氏に流れたようです。土壇場で高市氏に対する警戒感が一気に高まり、もともと石破氏に投票するつもりではなかった議員などの票も石破氏に回ったものと思われます。

前回も言いましたが、私は、9人の候補者の中から最終的に石破氏が選ばれたのは、消去法にはなるものの良かったと思います。石破総裁誕生によって円高・株安に振れたことが一つの象徴でしたが、アベノミクスを始め、岸田政権まで続いた安倍政治の終焉がようやく見えたからです。

安倍政治にも功罪ありますが、私は、日本の民主主義や法治主義を崩壊させた元凶は安倍政治(安倍・菅・岸田の3政権)にあったと解釈している立場です。旧宏池会出身の岸田氏が首相になった瞬間には多少の揺り戻しを期待したものの、実際には安倍政治の延長線上でのさらなる暴走が続いて国の形が変わり、政治腐敗も進みました。もしも高市氏が総理総裁に選ばれていたら、また嘘と開き直りの安倍政治に逆戻りするところでしたが、何とかぎりぎりで回避できました。

ただ、懸念していた通り、党内基盤の弱さに起因するブレが早々から出てしまい、石破氏は、事前にあれだけ国民に十分な判断材料を与えるまで拙速な衆院解散はしないと明言していたにもかかわらず、結局9日解散、15日公示、27日投開票ということになりました。しかも、この発表を内閣総理大臣に指名される前に行ったことが問題視されました。総裁選ではさかんに「ルールを守る政治」を声高に主張していましたが、早速の言行不一致と批判されています。

石破氏は、党内の反主流派の時代には比較的言いたいことを言い正論を吐いてきたものの、主流派になった途端、支持基盤の弱さゆえに裏の長老をはじめ、配慮すべきステークホルダーや抵抗勢力が多過ぎて身動きが取れなくなっているのでしょう。

解散については、もともとの自民党のシナリオが早期解散であり、総裁選では、いわばそれに異を唱えていたわけですが、いざ総裁になってみると、もはやそのシナリオを受け入れざるを得ない状況に外堀が埋められていたのだと思います。結果的に、石破氏の言行不一致となった早期解散が、吉と出るのか凶と出るのかはわかりませんが、何事につけ、できる限り本来の石破流をブレずに貫く方が国民の支持は集まると思います。石破氏もそこは良くわかっていて、「(石破カラーを出すと)国民は喜ぶが党内は怒る」と苦しい胸の内を吐露しているようです。

石破流をブレずに貫くという意味では、今回村上誠一郎氏を総務大臣という要職に抜擢したのは素晴らしいと思いました。周知の通り、村上氏は安倍氏を「国賊」と呼んで党から懲戒処分を受けた人物ですが、安倍氏全盛の時代から、石破氏以上に、安倍政治に異を唱え続けてきた人です。そのためずっと党内では隅に追いやられていましたが、この人事は岸田政権まで続いた安倍政治への明確な決別宣言であり、高市氏や旧安倍派などからは反発が大きく党を分断しかねない人事ですが、石破氏の覚悟を感じる人事でもあり、今後の総務大臣としての村上氏の手腕には注目したいと思います。

その他、現時点で、私が今回良かったと思うことと気になることをいくつか列記しておきます。

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