ようやく見えた安倍政治の終焉。石破氏の総裁選勝利でギリギリ回避できた“嘘と開き直りの政治”への逆戻り

 

裏金議員と統一教会議員をどこまで排除できるか

気になることその1

繰り返しますが、石破氏が改憲論者として9条2項の削除を言明している点や、アジア版NATOの構築を検討すると言っていることには賛同できません。ウクライナ戦争に関する発言を聞いていても、この戦争の裏の事情を正しく理解しているのかについては疑問です。

石破氏が、安倍氏が好んだ「台湾有事は日本有事」というフレーズや、岸田氏が好んだ「今日のウクライナは明日の東アジア」というフレーズを多用するのも気になります。「台湾有事は中国の内政問題。台湾有事を日本有事にしない」「明日の東アジアを今日のウクライナにはしない」ということこそを日本の政治家は明言すべきです。

党内人事や閣僚人事、官邸人事に、防衛大臣経験者を始めとした防衛省関係者を多数重用していますが、日米地位協定の見直しが、核保有を含めた再軍備を通じて戦争ができる国への転換を目指すということなのであれば要注意です。

気になることその2

三原じゅん子氏の起用など、疑問に思う人事がいくつもありますが、一つだけ挙げておきます。法務大臣に牧原秀樹氏が就任しましたが、Xを覗いてみるとすぐにわかる通り、この人はかねてからヘイト的な発言が多く、また、テレビ番組などで発言している内容を聞いていても超軽量級な人で、とても法務大臣の重責が務まるとは思えません。

また自分がさんざんヘイト発言をする一方で、パリオリンピックの時には、選手を誹謗中傷する人は全員逮捕してひとり残らず処罰すべき、などという乱暴な発言もしていました。この先、解散後も再選されて法相に留任するようなことになれば、国会審議などで間違いなく法務大臣としての資質が追及される事態となり、石破政権のアキレス腱になると予想します。

気になることその3

来たるべき総選挙において、所謂裏金議員と統一教会議員がどこまで排除できるかということは、今後の日本政治出直しのために非常に重要であると思っています。

統一教会問題については、いつまで言ってるんだ、などと言う人もいますが、日本の政権与党が外国の反社会的勢力の影響下にあり、しかもその実態解明や関係清算が未だにきちんとなされていないという大問題です。裏金や統一教会に関わった議員は出来る限り落選させることが日本政治の健全化のためにはどうしても必要です。

時間がなくて無理ですが、本来であれば、石破新総理が、裏金議員や統一教会議員を公認せず、別の対抗馬を立てるくらいのことをやって汚れた議員たちを党内から一掃すべきです。せめて萩生田光一氏など、旧安倍派の5人衆などと呼ばれた人たちは全員落選して比例復活も無しというような結果を期待したいですし、それが出来れば石破氏の支持基盤も強化されて今後の政権運営もやり易くなります。

立憲民主党の代表が野田佳彦氏になりましたが、いずれにしても、現在の野党の状況からして、次の選挙での政権交代はあり得ないと思います。そうである以上、のっけからの言行不一致で疑心暗鬼が広がる石破新政権ではありますが、これまで自民党内で反主流派だった石破氏が、安倍政治から脱却してどのような政権運営をするのか、そして次の衆院選挙をどう乗り切るのかについては、期待と共に引き続き注視していきたいと思います。

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辻野 晃一郎(つじの・こういちろう):福岡県生まれ新潟県育ち。84年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了しソニーに入社。88年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社しアレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長。また、2022年6月よりSMBC日興証券社外取締役。

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