大暴発で日本をも巻き込む“惨禍”を生み出すのか、アメリカ本土への「核発射」で勝手に自爆か?北朝鮮という最も厄介な“隣人”

 

核軍拡の波を世界各地に拡げるトリガーになる可能性も

枢軸外の地域諸国に対しては、ミサイル発射などを用いた瀬戸際外交を展開して脅威を与え、それを止める代わりに支援を取り付けようとしますが、“同盟国”としての中ロに対しては、両国からの支援を引き出すために、それぞれを激怒させないぎりぎりのラインを綱渡りのように歩き、体制の維持のための様々な支援を得ようとしています。

これまでのところ、まだこの戦略は機能しているように思いますが、中国またはロシアが本気で北朝鮮を切り捨てるような事態に陥るようなことがあれば、北朝鮮は生き残りのために根本的に戦略を練り直すか、またはそのまま消え去る運命になるのかの選択肢を迫られるかもしれません。

北朝鮮の物理的な存在は、現在、中ロにとっては米国に支配される自由資本主義社会・民主主義陣営と、国家資本主義体制・全体主義体制を隔てる究極のバッファーとして機能しており、それは逆側にとっても然りですが、その現実こそが北朝鮮と韓国が相互に願った朝鮮半島統一を現実的に不可能にしている背景です。

どちらの体制も「反対側に統一された統一朝鮮は見たくない」のが本音と言われています。ゆえにトランプ氏が大統領の際、板門店で金正恩氏と会談を行い、その際、一瞬だけ北朝鮮側に足を踏み入れた事実は、韓国ではとても大きなショックとして受け止められたそうです。

その懸念は、バイデン政権に変わり、北朝鮮が完全にアメリカ敵視政策に回帰したことで無くなったと思われていますが、その分、体制維持をかけて金正恩の北朝鮮の中ロへの傾倒が強まっています。

北朝鮮にとって運命的な変化が訪れたのは、ロシアによるウクライナへの侵攻ですが、それを機にロシアの不足を北朝鮮が埋め、その見返りにロシアの最新鋭の宇宙技術やロケット技術、そして恐らく核兵器製造のノウハウを得ることになり、ミサイルの精度・性能が向上しただけでなく、予てより懸念されていた核弾頭の最小化と、弾道ミサイルの大気圏突入のための技術を獲得したことで、北東アジア地域における軍事的プレゼンスを自ら獲得するに迄至っています。

今後、金体制の継承がなされるか否かは分かりませんが、必ず浮かび上がってくる大きな懸念こそが【北朝鮮の核の管理を誰がどのように行うのか】というBig questionです。暴発して地域全体を巻き込む惨禍を生み出すのか?意地で米国への発射を試みて自爆するのか?それとも…。

現在、ウクライナ情勢を巡ってロシアのプーチン大統領による核使用の脅しがよく取り上げられますが、それはウクライナのみならず、Beyond Ukraineの欧州各国がロシアの直接的な核の脅威に曝されることを意味するからですが、今後、そのロシア、中国、そして北朝鮮、さらには米国が核保有国として存在する北東アジア地域は、北朝鮮による核兵器使用の脅しによって、一気に緊張が高まることになります。

それで北朝鮮が得るものは「簡単にアメリカなどに攻め込まれることがない」という国家安全保障かもしれませんが、もしミサイルのみならず、お得意の“列車などでの核兵器・ミサイルの移動”が可能になったとすれば、世界各地の紛争に対しても少なからず影響を与えうる事態がそう遠くないうちに生まれるかもしれません。

もしかした同盟国であるイランに核兵器が供与されるかもしれませんし、それがアラブ諸国の核保有を加速し、核軍拡の波を世界各地に拡げるトリガーになる可能性も否定できません。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

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