雰囲気勢も通ぶれる「米大統領選2024」観戦ガイド 基礎票?ペンシルベニア州待ち?ハリスvsトランプ5つの勝敗パターン

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日本時間5日夜に投票が始まったアメリカ大統領選挙。最速では6日昼に大勢が判明するが、今回は前代未聞の大接戦とあって、正式に勝者が決まるのは週末になるとの見方も浮上してきた。世界のパワーバランスや経済にも多大な影響を与える「ハリスvsトランプ」の一大決戦。選挙情勢報道をチェックする上でぜひ知っておきたいポイントを、米国在住作家の冷泉彰彦氏が詳しく解説する。(メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:米大統領選、投開票直前の状況

「激戦州ペンシルベニア」と「両候補の基礎票」については2ページ目
「選挙結果はいつ判明する?考えられる5つの勝敗パターン」は3ページ目
「ペンシルベニア、本当のところはどうなのか?」は4ページ目
でそれぞれ詳しく解説しています

ハリスかトランプか?前代未聞、予測不可能の大接戦

本稿は、現地時間(アメリカ東部時間)11月4日(月)の午後遅くに執筆しています。大統領選の投開票を明日に控え、各局のニュースが両候補の最後の動向を伝えています。両候補ともに、最大の激戦州であるペンシルベニア州で選挙運動を締めくくるようです。

現在の状況ですが、全くの僅差で推移してきた選挙戦が、大詰めの段階で「より僅差になった」という言われ方がされています。ジョージ・W・ブッシュの選挙参謀だったことで著名な共和党系のアナリスト、カール・ローブ氏によれば「こんなに僅差というのは見たことがないし、僅差という状態がこれだけ長く続いたのは前代未聞」だそうです。まさにそんな感覚があります。

そうはいっても、アメリカ大統領選には長い歴史があります。そして、結果が出てみると、直前の状況の延長として理解ができる場合もあれば、一種のサプライズとなった場合もあります。

そこで今回は、まずこのメルマガ、そしてこのコーナーの前身である「JMM(村上龍編集長)」の時代まで遡りながら、「直前」の状況と結果の「答え合わせ」をしてみましょう。そのうえで、今回の選挙の票読みをシナリオ別に行っていきたいと思います。

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過去の勝敗を分けてきたペンシルベニア州の重要性

まず前回、2020年ですが、現職のトランプにバイデンが挑戦したこの時も「ペンシルベニアの結果待ち」になるという予想が多く、本欄でもそのようにお話していました。このメルマガは日本時間の火曜朝配信ですので、投票日の前日夕方の情勢をベースとしているわけですが、この2020年の時もそうでした。この予想はその通りとなって、ペンシルベニアの結果が土曜朝にほぼ確定するまでバイデンの当確は出ませんでした。選挙人数ではバイデン304対トランプ227でした。

その前回、2016年はトランプとヒラリー・クリントンの戦いでしたが、この時も「ペンシルベニア」が勝敗を分けるという予想がされていました。また結果はその通り、ペンシルベニアを抑えたトランプが勝利しただけでなく、ラストベルト3州(ペンシルベニア+ミシガン+ウィスコンシン)を取って圧勝となったのでした。選挙人数ではトランプ304対ヒラリー227でした。

ただ、この時は直前の全国支持率ではヒラリーがリードしており、トランプが追い上げているものの、ヒラリーが逃げ切るだろうと言われていました。また、トランプには「ミスコン楽屋でのわいせつ行為発言」というスキャンダルが、またヒラリーについては「第2メール疑惑」が出ていました。トランプのスキャンダルはかなり悪質という評価がありましたが、結果的には影響はなかったのでした。とにかく直前の数字や報道だけを見ていては数字の動きを見誤るということが言われ始めたのはこのときからでした。

その前の2012年については、選挙の直前に私の住むニュージャージー州などがハリケーン「サンディ」の直撃を受け、大きな被害を受けました。この選挙はオバマの再選をかけた選挙でしたが、経済運営への賛否が大きなテーマとなっていました。景気の緩やかな回復を優先したオバマは、格差の拡大や若者の失業を放置したとして民主党内の左派からも批判を受ける中での選挙でした。

そんな中で、即座に被災地に入って党派の違う共和党知事(クリス・クリスティ氏)と連携して危機管理活動をしたオバマへの動きが評価され、僅差でオバマが勝利したのですが、全国的には「景気と雇用の回復が余りにも遅い」という中で、オバマはかなり苦しんでの勝利でした。そうは言っても、現在のいわゆるブルーステート(民主党の優勢な州)は全勝して、加えてフロリダ、アイオワ、コロラドなども抑えた勝利でした。選挙人数では332対206でした。

その前の2008年については、まさにリーマン・ショック(9月)の直後であり、同時にイラク戦争も泥沼化する中で、ブッシュ路線への賛否が厳しく問われた選挙でした。そして結果的にオバマがマケインに対して大差で勝利したのでした。選挙人数ということでは、365対173ということですから、圧勝といって良いでしょう。

更にその前の2004年、これはブッシュが二期目に挑戦した選挙でしたが、イラク戦争への賛否が大きなテーマとなる中で、極めて接戦となりました。最終的には当時は決戦州と言われていた「オハイオ州」を制したブッシュがケリーを僅差で破りました。選挙人数ということでは、ブッシュ286対ケリー251で、仮にオハイオがケリーだったとしたら、271を取って勝っていたと言われました。この時は、宗教保守派とリベラルが価値観論争を繰り広げるなど、イラク戦争だけでなく幅広い争点がありました。

その前は2000年のブッシュ対ゴアの戦いで、この時はフロリダの選挙人数25を巡って、延々と再集計が行われ、最後は最高裁判断でブッシュがフロリダを取って、ブッシュ271対ゴア266という僅差で勝利しました。この時は、911のテロの兆候もなく、漠然と「クリントンの好景気」時代に少し飽きたムード、ゴア候補の「クソ真面目」なキャラへの敬遠というのが勝敗を分けたとされたのでした。

2000年以降の米大統領選のポイントはざっと以上です。さて、それでは今回の選挙について、4年前と同じように注目点を確認していこうと思います。

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