雰囲気勢も通ぶれる「米大統領選2024」観戦ガイド 基礎票?ペンシルベニア州待ち?ハリスvsトランプ5つの勝敗パターン

 

アイオワの変化はあるか?

中部のアイオワ州については、序盤戦からずっと共和党優位という世論調査結果が出ていました。ですが、投票直前の2日(土)になってハリス氏が3ポイントリードという数字が出て全米を驚かせています。これは州都デモインの新聞『デモイン・レジスター』が公表したものです。

この調査ですが、既に撤退した「第三極」のロバート・ケネディ・ジュニア氏(RFK)が3%を稼いでいるとしています。RFKはトランプを支持しているので、仮にこの3%がトランプに入れば互角となるわけですが、この数字をどう見たらいいのかは難しいところです。

アイオワは農業州です。ですから、不法移民の労働力が本当に追放されてしまうと深刻な労働力不足に陥ります。また、大口の輸出先である中国との通商問題が深刻になるのも困ります。また、ここ10年は共和党に傾斜しているものの、中絶問題などではリベラルな女性票が強いという見方もあります。

また、2008年にはオバマが勝った州でもありますし、その頃までは党員集会を最初に行うことで、スイング・ステートとしての存在感を見せていました。そのように誇り高いアイオワ人は、もしかしたらサプライズを起こすかもしれません。

ペンシルベニアは本当のところはどうなのか?

こちらはアイオワとは条件が違います。私はニュージャージーとペンシルベニア(PA)の州境の近くに住んでいるので、TVもフィラデルフィアのローカルを見ていますし、色々な用事で行くこともあり、土地勘もあります。

とにかく、非常に極端に異なったグループに分かれているのがPAの特徴です。東の州境に近いバックス郡などは、完全に東部の気風です。また東部の大都市フィラデルフィアも東部の大都市で、民主党が強いですし、アフリカ系のコミュニティも大きいです。

また、西部のピッツバーグも大都市であり、その中心部は金融とテックによるニューエコノミーが盛んで、民主党が優勢です。ところが、巨大な州(ほぼ長方形なので北海道より大きい)に、1300万人(北海道の2倍以上)が住んでおり、この2大都市を除く地域はアパラチア山脈の褶曲した山と谷が斜めに走っています。主要産業は畜産になります。大平原のような大規模な農業はできません。

従って、山間部の気風は非常に保守的です。よく言われるのが「フィラデルフィアとピッツバーグ(500キロぐらい離れていますが)の間に「アラバマ」が挟まっている、という形容です。しかも貧富の格差が半端ではありません。実は、今でもKKKなどの過激な極右が潜んでいるのはPAだという説もあります。また、PAの成り立ち自体が欧州の宗教弾圧から逃れた人々を収容する「究極の信教の自由」を実現する州という自己規定があり独特の宗教共同体があったりします。

その一方で、南北戦争以前は、南部から逃れた奴隷を逃がすための「地下鉄道(支持者のルート)」の拠点でもあったことから、特に東部は人種の多様性を誇りにしていたりもします。つまり極めて多様なのです。ですから、現在のように左右対立の激しい中では、様々な立場のグループが両派に分かれて競っているとも言えます。

製造業の没落という「ラストベルト」の感覚も濃厚ですが、一方で金融やテックの成功事例が多い中では格差の問題がどうしても実感されてしまう、これもPAの特徴です。従いまして、数字がここまで拮抗(多くの世論調査で差が1%以内)つまり、誤差の範囲内という中では、全く予想がつきません。

全く個人的な感想ですが、アイオワの農家ではスッタモンダの挙げ句に、奥さんに押されてダンナさんもハリスに入れるかもしれない、そんなイメージがあります。ですが、PAの場合は、夫は奥さんに黙ってトランプに入れ、奥さんは夫に黙ってハリスに入れるというような複雑性がありそうです。とにかく、PAについては良く知っているだけに、全く何の予想もつきません。

いずれにしても、極端なシナリオを描くことはできる一方で、可能性としてはPA待ちとなるケースが最も濃厚。しかもPAについては、蓋を開けてみないと全くわからないと言うしかないようです。

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