政治的理由で奪われつつある女性の最後の権利
ニューヨークタイムズ紙は、11月8日付の「After the Election, a Call for Women to Swear Off Men(選挙の後、女性に男性を断つようにとの呼び掛けが)」という記事の中に、4B運動の呼び掛け人の1人であるジェイダ・メブス氏のインタビューを掲載しました。記事によるとメブス氏は、トランプ氏が大統領に選出されたこと、フロリダ、ネブラスカ、サウスダコタの3州で女性の中絶の権利を保護するはずだった住民投票が失敗したことを受けて、次のように述べました。
女性に関する政策や中絶の権利は、当事者である私たち女性が決めるべき問題です。しかし、それらを私たちがコントロールできず、男性に一方的に決められてしまうのであれば、私たちは自分たちにできることで対抗するしかありません。まずは男性の影響力が及ぼさないように、自分たちの人生から男性を切り離すことです。
若い女性が、夜、1人でコンビニへ行くことが普通にできる日本で暮らしていると、こうした主張は極端に思えるかもしれません。しかし、日本の約20倍、年間15万件近くものレイプ事件が発生している国で、女性の最後の権利である中絶手術までもが、政治的理由から奪われつつあるのです。
その上、レイプや売春斡旋や人身売買など複数の容疑で起訴され、海外逃亡している著名人をヒーロー扱いするようなトランプ信者たちから、SNS上で「YOUR BODY MY CHOICE!(お前の身体は俺が決める)」などと罵られて続けていれば、こうした主張に賛同する女性が急増するのは自然の流れだと思います。
保守系メディアの「ワシントン・エグザミナー」は「The sexual separatism of the 4B movement won’t make women any happier(4B運動という性的分離主義は女性を幸せにしないだろう)」という否定的な見出しの記事を配信しました。しかし、実際に記事を読んでみると、4B運動を批判しているのではなく、同じく女性の切り離しを推進する男性だけのオンラインコミュニティー「MGTOW(ミグタウ)」なども紹介し、男女両面からの異性の切り離しはよろしくない。男女は結婚して子どもを産んでこそ幸せなのだ…という、絵に描いたような前時代の保守的な内容でした。
ま、これはこれとして、今回、あたしがあちこちのSNSをパトロールしてみた結果、アメリカでは若い世代の男女間の分断が急速に拡大しつつあることが分かりました。冒頭で紹介したNY在住のジャーナリスト、津山恵子氏の「今後はさらに分断が広がるだろう」という予測は、すでに始まっていたのです。そして、来年1月にドナルド・トランプ氏が大統領に就任すれば、この分断はさらに加速して行くことでしょう。
(『きっこのメルマガ』2024年11月20日号より一部抜粋・文中敬称略)
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