トランプとその支持者たちが考える「外交」の危険な中身
では、そのエリートへの反発や現状破壊というのが組織的にまとまっているのかというと、そうでもなく、バラバラのエピソードの断片が、感情的に束ねられているというのが実情でしょう。
例えば、
「ヨーロッパはアメリカをバカにしているくせに、NATOの安全保障にはタダ乗りをしている。カネを払わないのなら切り捨てたい」
「米軍には、捕虜や傷病兵を功労者、英雄とするカルチャーがあるが、意味不明だ。捕まった捕虜、怪我をした傷病兵は敗者であって、英雄ではない」
「アメリカの根幹には秘密の権力組織『ディープ・ステート』が巣食っていて、これが軍産共同体の利権を代表し、世界で戦争を起こしている」
「この『ディープ・ステート』の悪を暴露してきたのが、ジュリアン・アサンジであり、エドワード・スノーデンだ。この2人は英雄だ」
「ヨーロッパは、シリア難民などを勝手に入れて国内が混乱している。これは自業自得だ」
「韓国はアメリカと有利な通商条約を結んで、電子機器も自動車もやりたい放題だ。だったら、在韓米軍の維持費は100%払わせてやる」
「日本も韓国も駐留米軍のコストを100%払わなかったら米軍は撤退だ。その代わりに、日韓には核武装を許してやる」
「同盟国は民主主義なので、いちいち世論の意見を聞かないといけないので、何を相談するにしても時間が掛かる。それに言論が自由なので、アメリカの悪口を言ったりウルサイ。でも独裁国なら、独裁者との丁々発止のディールをすれば一発で問題は解決する」
「他国に言論の自由はあろうとなかろうと、知ったこっちゃない。ただ、アメリカ人が血で勝ち取った自由を脅かすものは始末する」
「合衆国憲法の基本的人権は先人たちが血で勝ち取ったものだから、不法移民やテロ容疑者には絶対に適用したくない」
というのが、トランプとその支持者の考える外交です。21世紀の西側の産業国の人々が聞いたら非常に不愉快ですし、何よりも過去のアメリカが世界で果たしてきた責任感をほぼ100%捨ててしまっているわけで、非常に極端な発想法だと思います。