トランプが破壊する「3つの大原則」と日本の危機
トランプを突き動かしているこうした衝動には、確かに1つの底流はあります。これはアメリカの孤立主義というもので、これが20世紀の後半以降で最も極端になったものがトランプ外交と言えます。
アメリカの孤立主義は、共和党の伝統にはしっかり組み込まれているものであり、基本的には「ヨーロッパのトラブルには介入しないことで、アメリカは勝手な繁栄を継続したい」という態度のことです。
歴史的には、第一次大戦の初期、第二次大戦の初期の2回、アメリカ共和党はかなり強硬にこうした孤立主義の立場から「欧州大戦への参加拒否」という態度を示しました。これに対して、欧州の同盟国を救うために参戦を主張し、また後に実行したのは民主党だったのでした。
冷戦期においても、実際に「熱い戦争」であるベトナム戦争にのめり込んでいったのは民主党のケネディとジョンソンで、いずれも民主党でした。冷戦を始めたアイゼンハワー、ベトナム戦争を止めたニクソン、冷戦そのものを終わらせたレーガン、ブッシュはいずれも共和党です。
ですから、トランプが孤立主義に傾くとか、ウクライナ戦争を終わらせようとすることには歴史的必然はあるということになります。
問題は、アイク、ニクソン、レーガン、ブッシュが追求した「戦争をしない」「戦争を終わらせる」ことによる「国益」には「世界の安定」という目的が入っていたのに、トランプの孤立主義や介入拒否の姿勢はそうではない、ということです。
ですから、国際社会としては、冷静な警戒感が必要なのは間違いありません。ただ、アメリカ保守の孤立主義には長い伝統があり、その延長にトランプ外交が位置づけられるのは事実だと思います。
その一方で、トランプの言動の中には、次のような印象を与える部分があります。それは、20世紀の歴史によって作り上げられた3つの大原則、
「東西対立の枠組み」
「日本の降伏と朝鮮戦争休戦による東太平洋の平和」
「イスラエル、パレスチナ2国家体制による中東和平」
この3つをすべてぶっ壊してしまおうという野心です。トランプの姿勢については、考えれば考えるほど、そのような意図を感じてしまうのです。トランプの「放言」をそのまま受け止めて、そこにある種の一貫性を見るのであればそうなるわけですが、ここが一番大事な点で、うろたえてはダメです。