トランプ本人もコア支持者も「難しいことはわからない」
重要なのは、トランプ本人やコア支持者には「そんな難しいことはわからない」のであり、だからこそ、メッセージにもならないし、目標にもなっていない、ということです。
そもそも、トランプ支持者は歴史などまったく興味がないし、まして世界の歴史など勉強したことはありません。
ですから、「冷戦構造におけるアメリカの負担は拒否する」などという発想はありません。そもそも「冷戦構造」などという言葉の意味は理解できないのです。「サンフランシスコ体制」などという難しい言葉などには、むしろ拒否感を持つと思います。
つまり、過去にある壮大な歴史をまったく知らないので、壮大な破壊をやろうというような頭の構造にもなっていません。一見すると、トランプはG7で安倍総理やメルケル首相(いずれも当時)に囲まれて「それは違うでしょ」と言われていたときと比較すると、プーチンや金正恩と一対一で雑談しているほうが嬉しそうに見えます。
ですが、それはそれだけのことなのです。強権主義が好きで、民主主義が嫌いというわけではないのです。これはトランプが実は民主主義を信奉しているということではなく、そもそも、強権主義とか民主主義といった「概念」とはまったく無縁の人々に支えられているというだけです。
例えばカマラ・ハリスは、トランプのことを「ファシズム」とか「ファシスト」といって批判しましたが、トランプ支持者は「そうした政治的な概念語」を知らないので、単に悪口を言われたと思っただけです。
ですから、サンフランシスコ体制の破壊だとか、中東和平の破壊だとかという、壮大なプログラムがあるわけではありません。そもそも、そうした歴史、政治、思想、概念といったものと無縁の人々に支えられているのがトランプ現象だからです。