何を言っているか理解不能。演説内容も支離滅裂なトランプに心配される「認知症」の深刻化

 

イーロン・マスクの「さらなる黒幕の存在」を指摘する説も

イーロンは米国市民権を獲得したのが2002年ということもあり、今までは政治には縁遠く、16年にはヒラリーに、20年にはバイデンに投票したというごく平凡なカリフォルニア州民でしたが、22年にツイッターを買収した頃から共和党寄りになり、トランプが銃撃された暗殺未遂事件に何故か激しく反応して、まるで懐に飛び込むかのような急接近をしたのです。

ただ、これは彼の単独行動なのかという点については、さらなる黒幕の存在を指摘する説もあります。イーロンがスタンフォード大学院を出た後、1999年にオンライン銀行「X.com」を創業し、翌年に同じスタンフォードのロー・スクール卒のピーター・ティールが作った電子決済システム「PayPal」と合併、さらにそのPayPalが02年に株式を公開するや否や大手オンライン通販の「eBay」がこれを買収した。

共同経営者にして筆頭株主だったイーロンはこの時30歳かそこらで、1億7,580万ドル(約200億円)を手にし、今日の「世界一の大富豪」への道を走り始めるのですが、注目すべきはもう1人のピーター・ティールです。

このPayPalを創った人々はみな優秀で、後に「Fortune」誌の07年の特集記事で「PayPal Mafia」と名付けられてすっかり有名になりますが、そのマフィアの間で「ボス」と呼ばれるのがPayPalのCEOだったティール。

イーロンは上述のように共同経営者で筆頭株主。他に03年に「Linkedin」を創業したリード・ホフマン、05年に「YouTube」を共同で設立したチャド・ハーリー、スティーブ・チェン、ジョード・カリムの3人と、その主な出資者となったベンチャー投資会社「セコイア」のレーロフ・ボサがいます。

こうして見ると、PayPalを売って大金を手にした若者たちがそれぞれに独立しながらも連携しつつ、現在主流をなすソーシャル・メディアの歴史を作って行ったのです。

「Facebook」はスタンフォードでなくハーバード大学の大学院生だったマーク・ザッカーバーグが、最初は学内の学生親睦のためのツールとして作ったものが、全国に、世界に広がったものですが、その拡大の初期に投資をしたのはピーター・ティールとLinkedinのリード・ホフマンでした。

最近まで政治に興味を持たなかったイーロンと違って、ティールはシリコンバレーの経営者たちの間に流れる「サイバー・リバタリアン」の思想に染まっていて、16年のトランプの最初の大統領選では選挙運動から関わり、政権移行チームにも参加しています。

リバタリアンというのは米国政治に根深く存在する自由至上主義というか、過剰なまでの自由主義で無政府主義に近いと言われるほど政府の規制を嫌う考え方で、たぶんティールはトランプが既存の政治構造をブッ壊すのを見たかったのではないかと思います。

その2年後の中間選挙でも、トランプのMAGAを支持する共和党候補者に惜しげもなく献金して応援しました。が、今回は何故か、23年4月の段階でトランプに対する不満を口にし、支持を撤回しています。

その理由はよく分かりませんが、私の邪推では、トランプの迷走ぶりを見てこれでは役に立たないと判断し、そうかと言って自分の代わりにイーロンを送り込んだわけでもなさそうなので、何かもっと先を見て別のことを考え始めたのではないかと思います。

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