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金儲けにしか関心のない立花孝志という人の悪質加減

こうして、本来は人間同士のつながりを求める手段として開発されたはずのSNSを含む電子的なソーシャル・メディアが、選挙や政治を思いのままに操る一部の人たちの道具として悪用されるようになった。

11月のルーマニアの大統領選では、事前にはほとんど泡沫候補扱いだった親ロシアの極右政党代表が「SNSだけで選挙運動をする」と宣言して、何と1位になり、決戦投票に進むことになりました。有力視されていた現首相は第3位で、決戦投票に残ることもできませんでした。日本でも同じようなことが起きているのはご承知のとおりです。

ただ、立花孝志という人がやっていことは、「政治、選挙へのSNSの応用」ではありません。兵庫県知事選に立候補しながら「私に投票しないで」と言うわけですから、当選することが目的ではなく、彼の関心事は金儲けしかない。奇矯な行動も含めてSNSに刺激的な映像をどんどん上げて拡散させて、「同意」ボタンの数を集めれば広告収入が増える。そのことのために選挙という公共の空間に乱入し悪用しているのですから、余計に質が悪い撹乱者であるとも言えます。

イーロンの場合は、これ以上の金儲けというより宇宙ビジネスや中国にも工場を持つテスラなど自分の利権確保が狙いかもしれず、こちらの方がむしろ可愛いようなものです。

こういう風潮の中で、もう1つ私が懸念するのは、AIの普及の影響です。iPhoneは次の世代の機種からミニAIの機能を搭載するそうですが、これは、今でも「SNSは人類には早すぎた」と言われている状況にさらに大きな弊害をもたらすのではないか。SNSもAIも、その技術自体は中立で、よくも悪くも使えるものですが、その悪用を防ぐ手段が伴わないまま世の中のバラ撒かれてしまっていいのかどうか、という問題があります。

個人レベルで言えば、そういうものから自分を遮断するのは簡単で、「見なければいい」のです。私は実はとっくにそうしています。SNSでの言動が炎上して悩んで自殺したりする人がいるのは気の毒ですが、見なければ悩むこともないのです。

私は新しもの好きなので、話題になるたいていのSNSは真っ先にアカウントを作成して試してみますが、それっきりです。それで何か困ることが起きるかというとそんなことはなく、平穏な情報ライフを送っています。

ドイツの若き天才哲学者のマルクス・ガブリエルも「ほとんどがアメリカの企業によって保有されているソーシャルメディアに自分のアイデンティティを預けてしまうことを止めるべきだ」「SNSは廃止すべきだ」とまで言っていますが、確かに止めても何の差し支えもないと思います。

しかし個人として止めるというのでは社会的な解決にはならないのはもちろんのことで、例えばWikipediaの創業者のジミー・ウェールズが最近、「トラストカフェ」という、人間の信頼感だけが集まる場所を作り、そこには広告も「いいね!」ボタンも送金要請も何もないという電子空間を作る実験を始めて話題となっています。

あるいはまた「分散型SNS」と言って、Mastodonや日本で言うとMisskeyとか、クローズドの限定された空間で人間的なつながりを回復しようとする技術的な試みあります。こういうところに着目しつつ、さて我々は時流にただ流されるのでなくどういう社会を作り出すことができるのかを真剣に考えなければならないでしょう。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2024年12月9日号より一部抜粋・文中敬称略。ご興味をお持ちの方はご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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