阪神タイガースもMLB並み全面禁煙を義務化。ディズニー映画も喫煙シーン完全排除で世界中から嫌われるタバコの煙

 

ディズニー映画は喫煙シーンを排除。エンタメ界でも広がる禁煙

芸能界における喫煙文化も大きな変化を迎えている。今年3月16日から、東海道、山陽、九州新幹線の車内に設置されていた喫煙ルームが廃止され、多くの愛煙家の芸能人に影響を与えた。

お笑いコンビ「しずる」の村上純は、品川駅で「生まれて初めて喫煙ルームのない東海道新幹線(新大阪まで)に今から乗る」とX(旧Twitter)に投稿し(*3)、注目を集めた。

長らく日本の芸能界では、喫煙は「大人っぽさ」や「格好良さ」、「洗練」の象徴として、男性俳優やミュージシャンのステータスの一部とされてきた。映画やドラマ、バラエティ番組でも喫煙シーンは頻繁に登場し、視聴者にとっても日常的なイメージがあった。

しかし、近年の健康意識の高まりや社会的な価値観の変化により、芸能界の喫煙文化にも変化が見られる。禁煙する芸能人が増加し、メディアでの喫煙シーンも減少傾向に。

さらに、世界的にも喫煙シーンへの規制が強化。2016年2月、世界保健機関(WHO)は、喫煙シーンのある映画やドラマが若者を喫煙に誘導していると指摘し、これらを「R指定」とするよう勧告。また、ディズニーは2015年以降、マーベル作品を含む自社の映画で喫煙シーンを全面的に排除している(*4)。

戦費調達の確実な税収源。国策と深く結びついている喫煙習慣

喫煙習慣は国策と深く結びついている。

日本におけるタバコの国策利用は、日清戦争と日露戦争の時期に端を発す。明治政府は戦費調達の確実な税収源としてタバコに注目し、専売制を導入。日清戦争(1894-1895年)では、出征兵士への慰問品として紙巻きタバコが配られている。

日露戦争(1904-1905年)においては、戦費調達のためタバコ税の比重がさらに増加。1903年から1904年にかけて、総税額に占めるタバコ税の割合が8.5%から11.5%に上昇(*5)。

この現象は日本特有ではなく、欧米の帝国主義諸国でも同様。戦地では兵士たちにタバコが無料または低価格で配給され、多くの兵士が喫煙習慣を身につけた。

その後、戦地から帰還した元兵士が喫煙をやめられず、周囲にも喫煙を広めたことで、タバコの習慣が市民社会に深く根付いてきた。このように、タバコは嗜好品であると同時に、国家の財政政策と密接に結びついた重要な税源となってきた。

一方、近年の報道によると、日本たばこ産業(JT)は自社に不利な記事を抑制するため、新聞社に圧力をかけていると指摘(*6)。広告代理店を介し、新聞社の広告担当者がJTに情報を報告する仕組みが存在し、JT幹部にまで伝わるという。これにより、広告費の多寡に関わらず、メディア報道に影響を及ぼす構造があるとの批判が出ている。

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引用・参考文献

(*1)「『2009年以降生まれは一生たばこ買えない』英国禁煙法、1つ目の関門通過」中央日報 2024年11月28日

(*2)臼北信行「なぜプロ野球選手は『タバコ』がやめられないのか?」TI mediaビジネスONLINE 2013年3月7日

(*3)「新幹線の喫煙ルーム廃止…都内から大阪移動の愛煙芸人、喫煙所へ駆け込み『完全に決まったよ』」スポーツ報知 2024年3月17日

(*4)「ディズニーが作品内での禁煙をピクサー、ルーカスフィルム、マーベル作品にも適用」映画.com 2015年3月25日

(*5)石田雅彦「そんなに『害』があるのに『タバコ禁止』されない理由」Yahoo!ニュース 2018年6月18日

(*6)「JTと電通が露骨な『報道捜査』 大メディアでは『煙草批判はタブー』に」選択 2016年7月号

(『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』2024年12月7日号より一部抜粋・文中一部敬称略)

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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