パーカー組は「頭が悪いスーツ組」を実力で黙らせてきた
先の証券会社元社員が続ける。
「私も当時、いろんなITベンチャー企業さんと交流しましたが、まず驚かされたのがその型破りな服装と企業文化です。右肩上がりでイケイケの某有名サービスをほぼ1人で開発したという天才エンジニアがパーカー姿のまま床で寝ていたり、社長も社長でシャワーを浴びたばかりらしく髪はびちゃびちゃ、Tシャツ1枚、しかもハダシとか(笑)、そういう光景を無数に目撃しました。
当然、そんな彼らは『ビジネスマナーがなっていない』『TPOがわかっていない』と批判されることもしばしば。いわゆるハッカー文化とスーツ文化の対立です。特に小さなITベンチャーが大手企業との業務提携などを進める際には懸念の声があがりやすく、こちらが板挟みになることが多かったですね。
でも私が知るかぎり、当時は仕事のできるパーカー組が、頭の悪いスーツ組を実力と結果で黙らせてしまうことがほとんどでしたし、ハッカーたちの能力を信じて投資した人は大きなリターンを得ることができました。
いま、妹尾さんの『「商談にパーカーを着てくるおじさん」批判が物議を醸していますが、彼女はまるで、30年前のスーツおじさんのような古臭いことを主張しているように見えます。ビジネスにおいて、ほとんど何の役にも立たないことが証明されたはずの話を、20代の女性が今さら蒸し返すというのは興味深いことです。ただ私には、服装だの容姿だのばかりを気にしている保守的な人間が、新しいビジネスやコンテンツを生み出せるとは思えない。そういう人は、せいぜい炎上マーケティングで糊口をしのぐのが関の山なのではないでしょうか」(元証券マン)
こうしてみると、昔も今もハッカー気質の中高年男性ほど、「今の若者の歓心を引くため」ではなく、純粋に愛着心や着心地の良さからパーカーを着続けている可能性は高そうだ。
いい年をしたおじさんがいつまでも若者ぶった服装をするな、という批判が聞こえてくる気もするが、それは大きなお世話だし、それこそ「鏡を見てからものを言え」という話にしかならないだろう。
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