中3死傷、柏市夫婦殺人…中高年男性の「悪意」に日本社会が敗れる根本理由。犯罪抑止に必要なのは懲罰か保護か?

 

「警察だけでは対応できない」犯罪が日本の脅威となる

では、こうした改革が正解なのかというと、問題はそう簡単ではありません。まず、人材の問題があるわけです。

アメリカの場合は医師だけでなく、看護師やその他の業務も含めて医療従事者の人件費は非常に高額です。そんな中で、医療従事者に対してDVなど市民のトラブルに対して、急派する体制を組むというのはまったく簡単ではありません。

さらに言えば、小競り合いなどが発生している場合に、当座の解決をする、つまりトラブルの当事者を物理的に引き離すといった行動を、医療従事者に求めるには相応の訓練も必要となるでしょう。とにかく「警察の予算カット」というのは、そういったかなり深く考えた発想だったのですが、読者の皆さまもご承知の通り、2024年の選挙ではトランプが勝ってしまいました。

トランプは、このような実務的な議論など一切耳を貸さず、「警察官による不慮の事故による殺害はすべて無罪にする」などと全く正反対の公約をしていたのです。さらに言えば、「BLMはアメリカへの攻撃なので、正規軍を使って鎮圧する」などとも言っていました。この2つの主張はそのまま文字通り実施されるとは思いませんが、少なくとも「警察の予算カット運動」については、その真意が多くの世論に伝わらないままに、全国レベルの政策としては闇に葬られてしまいそうです。

それはともかく、トラブルが起きている場合に、問題の性格によれば「警察ではなく医師やカウンセラーが行くべき」という発想と同じように、日本における凶悪犯罪についても、同様のアプローチを考えるべきだと思うのです。

例えば、ストーカー問題がそうです。ストーカーというのは難しい問題で、例えばレターを3件までならいいが、昔のように100回もアプローチするのは犯罪とか、線引が難しいわけです。その意味で防止法があるわけですが、線引について有効な数値を明確にして判例なり、捜査の基準を作るという意味では制度はまったく未整備です。

男性と女性で見方が違うし、仕掛ける側と受ける側でも違い、男女や性的オリエンテーションの違いとのマトリックスになると、非常に複雑です。

本人とその親の観点の違いというのもあるかもしれません。本人は満更でもないのに、親が反対してストーカー通報するという場合もあるでしょう。反対に、本人は嫌なのに、親は相手が金持ちなのでアプローチを歓迎する等の場合もあるわけです。

もちろん、こうした話について原則は民事不介入でいいのかもしれませんが、異常値を超えたら第三者が介入すべきです。

その場合に、駆け込む場所が警察というのは、やはり無理があるように思います。男女の機微やそこに入り込む異常心理、加害の可能性といった部分について、警察に判断させて結果責任まで問うのは、どう考えても酷だと思います。

また、警察の限られた人的パワー、組織的パワーを考えると、こうした問題のノウハウ収集にリソースを割くのは効率と精度の点からも疑問です。

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