(3)「マスク派 vs.泥臭いトランプ支持者」共和党内は内紛含み
3つ目は、内紛含みということです。これが恐らく、「トランプ2」の大きな注目点になると思います。その内紛含みということでは、かなり複雑な構造があります。三重構造といってもいいでしょう。
まず外側には先ほど申し上げたように、クラシック(親NATO、親日、グローバリスト)な共和党vs.トランプ派という共和党内の内紛があります。
その内側のトランプ派の中では、クラシックな性格をもつイヴァンカ夫妻などは排除されていますが、新しいメンバーとしてマスク派など「知的グループ」が台頭しています。
マスク派にはラマスワミ元大統領候補などもおり、とにかく政府の過激なリストラ、SNSの支配、ポリコレ追放などをやりながら、ローテク的な政治経済の徹底排除を狙っています。
このマスク派(ハイテク派)と、泥臭いトランプ支持者には、かなり水と油の対立構図があると思います。ヴァンス副大統領が、そのどちらに就くのか、あるいは両者の「架け橋」となっているのかは不明ですし、今後の動きを注目するしかないと思いますが、とにかく対立は顕著でどこかで爆発する可能性は否定できません。
そしてもう1つ、トランプ家の中でも対立があるようです。イヴァンカ夫妻はとりあえず今回の政権からは排除されており、と言いますか自分たちが一線を画しているようです。その上で選挙戦の中で見えていたのは、長男のドン・ジュニア、次男のエリックの2人は、まずヴァンスを副大統領候補に擁立するのに尽力したとか、マスクとも親しい、つまりトランプ陣営の「知性に屈している」ように見えます。
裏返して見ると、ドン・ジュニアとエリックの両名は、「少なくとも自分たちは政治家の器ではない」ということを理解しているように見えます。だとしたら「トランプ家の人間にしては、驚くほど優秀」とも思えますが、そこにとんだ伏兵がいたのでした。それはエリックの妻、ララという存在です。
元TVプロデューサーであったララは、かなりの野心家で「自分は初の女性大統領になる」などと公言しています。その布石がどうか分かりませんが、何と共和党の全国委員長(共同代表)になっているのです。この間、ララは上院議員の候補を狙って活動しており、2回も噂になっているのですが、結果的に周囲に止められています。
例えばですが、ララが「ヴァンスやマスクは難しいことばかり言っていて庶民の味方ではない」などと主張して、「後継狙いのお家騒動」を起こす可能性はあると思います。ララの権力の背後には義父による寵愛があり、また義父のトランプが適度に調節している中では、ララとしては増長できない構図も見え隠れしています。
仮にトランプの判断力が鈍ってきた場合には、ララが「勝負に出る」中で一家がガタガタになる可能性も否定できません。その場合ですが、マスクとヴァンスが結託して、そこにイヴァンカ夫妻が加わる中で、トランプ陣営を「クラシック共和党」にシフトさせながら2028年に向かうというシナリオも、そんなに荒唐無稽ではないと思います。
いずれにしても、トランプの共和党、そしてトランプ陣営とトランプ家は、「トランプ1」の時期よりも、はるかに強大であり、少なくともカネや票には困っていない中で、今度は内部抗争により崩壊する危険を抱えていると言えます。