なぜトランプ派は“反日性”を帯びてしまうのか?
危険なのは、日本がターゲットになる可能性が増しているということです。例えば、日鉄のUSスチール買収問題に関しては、とにかく「政治外交問題と切り離す」のが鉄則なのに、石破政権がブツブツ発言を続けるので、良くない雰囲気になってきています。例えば、今回は、買収提案のライバルである「クリーブランド・クリフス」のブラジル人であるゴンカルベスCEOが「日本は中国より悪い」などと言っています。
これはゴンカルベスがブラジル人だから、余計に過激な発言をしたがるとか、特に母国での日系の真面目な働きぶりに悪意を持っているという可能性はあると思います。ですが、それとは別に、トランプ陣営の中にトリシ・ギャバードというハワイ選出の元連邦下院議員(当時は民主党)で、その前は軍人だった女性がいるのですが、彼女の反日発言が影響している可能性があります。
つまり「トランプ派が抱えている微妙な反日」をゴンカルベスが意識しての発言ということです。日本は「安い値段で在日米軍に守ってもらっている」から「ズルい」ということで、圧力の対象になる危険がありますが、これはまだカネで解決できる話です。ですが、ギャバードのように「日本の防衛費増額はハワイ再侵略の野心の現れ」などという言いがかりになるとまったく捨ておけない話になります。
もちろん、これによって誰が得をするのかは明らかで、とにかく危険極まりない話です。ギャバードについては、疑惑がたくさんあるのですが、仮にCIAとNSAの上司にあたる情報長官になってしまうと大変です。
最悪のケースとしては、NATO解体は政治的に無理、ならば日米安保破棄で日本を孤立させ、さらにダークサイドに追い詰めれば「面白えや」といった劇場政治の「晒し者」にされる危険もゼロではありません。
日米中韓台の複雑な関係性など、勉強しないと分からない話にはトランプ派は興味ないので、軍国日本が復活して単純な悪役を演じてくれたら「面白い」などという話には簡単に飛びつきます。
日本としては、これが最悪シナリオで、それと比べれば防衛費負担の話などは条件交渉で済む程度問題です。少なくとも国家が孤立して吹っ飛ばされるような話ではありません。では、日本は大騒ぎをするべきかというと、これは逆です。そうではなくて、何も言わず、言われず、静かに時間が経過するのを待つのが上策です。ただ、危機意識は持っておくべきだと思います。