米国経済にとってもマイナスとなる公算が高い関税戦争
初日に署名した46の大統領令のうち、いくつかは憲法違反が争われそうな様相だそうですが、そのような無茶をしてでも「政権発足直後から公約の実現に向けてスピーディーに勤しんでいる」姿を支持層に見せつけることで、自身に対する支持の強化はもちろん、2年後の中間選挙、そして次の大統領選挙に向けた権力基盤づくりを急いでいるのではないでしょうか。
いろいろな紛争に首を突っ込んで停戦を成し遂げようとするのもその一環ですが、先週号でも触れたように、プーチン大統領もネタニエフ首相も「今、言うことを聞いてトランプ氏に花を持たせておき、トランプ政権の間は大人しくしつつ着々と体制を整え、トランプ氏が去った後に宿願を実現するために再攻勢をかければいい」という思惑を持っているのではないかと勘繰りたくなりますし、ロシアやイスラエルの微妙な動きを見ていると、恐らくそうではないかとさえ感じます。
またトランプ氏が“いいとこどり”した後は、後始末を他国(ウクライナ情勢は欧州各国に任せ、中東は中東諸国に押し付ける)に押し付けることになることを皆、重々承知であるため、永続的な和平の実現は恐らく不可能になると思われます。
アメリカが世界の警察官としてのプレゼンスと、秩序作りに回帰するのであれば、様々なアメリカが絡む合意の実現と継続は裏打ちされるのだと思いますが、口だけ出し、おいしいところだけ取って、あとは放り投げる昨今の外交手法を、トランプ政権が継続するか、さらに露骨に行うのであれば、トランプ政権後の世界はまさに地獄絵図の様相を呈するのではないかと恐れています。
私の専門外ではありますが、トランプ大統領が交渉のカードとして持ち出す関税措置は、発動される側からすると恐怖以外の何でもありませんが、これは2国間の問題にとどまらず、すでにグローバル化し、相互依存が進んでいる国際経済と流通体制、需給体制などすべてにネガティブな影響を与え、食糧・エネルギー・資源などのソフトな安全保障体制にも大打撃を与えることになりますし、その無茶な関税措置を発動するアメリカも、その大打撃から逃れることはできないと思われるため、コロナのパンデミックとロシアとウクライナの戦争を機にブロック化し、スランプ状態に陥っている国際経済や流通体制に止めを刺す最悪の事態になるかもしれません(そしてその跳ね返りはアメリカのさらなる物価上昇に繋がるため、アメリカ経済にとってもマイナスになる公算が高いと思われます)。
トランプ政権はまだ始まったばかりですので、これらの懸念がすべて杞憂に終わるかもしれませんし、そうあってほしいと願いますが、これから訪れる国際情勢の不確実性と荒波に対して、いかにそれらに対応し、乗り越えていくかについて、私たちはできるだけ早急かつ具体的に戦略を練り、国際協力の下、実施していくことが大事だと考えます。
「近々、ワシントンに来てもらうから、準備していてほしい」
このような連絡が、このコラムを書いている最中に来ました。
具体的に何を期待されているのかは分かりませんが、どうも紛争調停・仲介に対する“考え”を尋ねられるのではないかと予想しています。
恐らくその内容を詳しくお話しすることはできないと思われますが、今後のコラムの論調には無意識のうちに影響するものと思われますので、読み取っていただければ幸いです。
以上、国際情勢の裏側のコラムでした。
(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2025年1月24日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録ください)
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