トランプが政権発足間もない時期に成果を求めるウラ事情
トランプ政権については、上院で承認されて晴れて国務長官に就任したルビオ国務長官がヒズボラの弱体化やイランの弱体化などに対する“イスラエルの貢献”を称賛し、ガザにおける戦闘の一時停止に踏み切ったことを高く評価する旨発言しているものの、ヨルダン川西岸の事態については表立った発言もコミットメントも行っておらず、トランプ政権がどのような姿勢を本件について取り、イスラエルに対してどのような対応をするのかは、まだ不透明です。
ただ、中東地域における紛争のマグマと怒りの連鎖は収まることなく、沸々と燃え滾っており、何かしらの偶発的な衝突や事件が起きた暁には、一気に爆発し、下手するとこれまで以上に地域における戦争の勃発の可能性が高まるものと懸念しています。
ガザの停戦の仲介をしたカタール政府も、今回の成果を高く評価しつつも、「非常にデリケートなバランスの上に成り立っている合意・停戦であり、バランスを支える微小な駒が倒れるだけで、全体が一気に崩れて、最悪の事態に発展する可能性がある」と懸念を示しています。
すでにヨルダン川西岸でのイスラエル軍の横暴に対して、ガザの停戦の当事者であるハマスが反応しており「イスラエルの本心が露わになった。パレスチナは今こそ団結してイスラエルと戦うべきだ」と抗戦を呼びかけており、事態は予断を許さない状況と言えます。
この背景には、以前、中国政府が音頭を取ってパレスチナ関係団体14個とハマスをUnited Palestineとして協力する体制を作ったことがありますが(北京合意)、その協力を今、発動させるべく、中国が暗に発動を促し、ロシアもその支援を表明するなど、非常にきな臭い状況が生まれてきているのは、とても大きな不安材料になってきています。
この中国とロシアがパレスチナの後ろ盾になっているという事態を、トランプ大統領が気にしないはずはなく、実は、ウクライナ絡みでプーチン大統領と話す際に本件も持ち出すと言われていますし、近々、習近平国家主席と会談する際にも「中東には手を出すな」といった要求を、60%の関税措置の発動というカードをちらつかせながら、中国に迫るのではないかと考えます(これらについては、誰からも言質は得られていませんので、あくまでも私の懸念と妄想?!です)。
トランプ大統領のディール・メイキングが思い通りにいくかどうかは分かりませんが、再選の心配をしなくていいトランプ大統領は、実質的には好き放題できるはずのところ、どこかでバランスを取ろうとしているようにも見えます。
ロシアとウクライナの停戦や、中東における停戦の実現といった成果は、巷で囁かれるようにまさにノーベル平和賞に値するような内容かと思いますが、どうして政権発足して間もない時期に矢継ぎ早に成果を求めようとするのかは、いろいろな見方が存在するでしょう。
個人的には、すでにレガシーづくりに勤しんで自らの偉大さを示そうという自己顕示欲に加え、自身の保身のために、早めに成果を上げて、まずは2年後の連邦議会中間選挙で共和党の多数派を維持して、行政と立法府両方で共和党の権力基盤を強固にし、かつ自分の次の大統領(2028年)も共和党系候補を勝たせることで、前政権後、自らに降りかかる様々な訴追をとことん逃れることも画策しているため、成果を急いでいるのではないかと考えています(Yale大学の哲学教授のスタンリー教授の表現をお借りすると「トランプ大統領の最終かつ究極目標は刑務所に入らず、自分と家族を裕福にし、死ぬまで権力の座に居座ること」と言えます)。
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