従業員の忠誠心や倫理観の低さが招いた犯罪。三菱UFJ銀行「貸金庫窃盗」が起きた当然の背景

 

大手銀行に浮上する「貸金庫サービス撤退論」に地銀は

今回の事件を契機に、大手銀行による貸金庫サービスからの撤退論が本格化している。

貸金庫サービスは長年、銀行が提供する付加価値サービスとして顧客の信頼を支えてきた。しかし、三菱UFJ銀行で発生した事件を受け、同行は貸金庫サービスの撤退を含めた見直しを検討中であり、他のメガバンクも同様の動きを見せている。

背景には、貸金庫サービスの収益性の低さとリスク管理の難しさがある。このサービスは高度なセキュリティ対策を必要とし、運営コストが高額になる一方、利用料が低く設定されているため収益性が乏しい。また、今回の事件で浮き彫りとなったように、内部不正のリスクも大きく、その管理には多大なコストと労力がかかる。

一方、地方銀行は異なる対応を示している。地方銀行にとって、貸金庫サービスは地域密着型営業の重要な一環として位置づけられており、顧客との信頼関係を構築する有力な手段となっている。大手銀行の撤退が進む中、地方銀行は新たな顧客を獲得する好機として、このサービスを強化する動きも見られる。

実際に、首都圏の信用金庫や信用組合では、貸金庫の需要が流入しているという報告もある。これにより、大手と地方銀行で貸金庫サービスに対する姿勢が二極化する可能性が高い。

【関連】三菱UFJ女性元行員に「奇跡の大勝利」はあり得たか?ギャンブル依存症者が例外なく破滅するワケ…貸金庫窃盗で人生アウト
【関連】元国税が暴く税務署副署長「税金で風俗店通い」悪質手口。実は税務署ぐるみの組織的犯罪か? #確定申告ボイコット から1年
【関連】中3死傷、柏市夫婦殺人…中高年男性の「悪意」に日本社会が敗れる根本理由。犯罪抑止に必要なのは懲罰か保護か?
【関連】犯人の言い分が優先され「失われた命」は“ないがしろ”にされるニッポン。我が国の司法はなぜここまで機能しなくなったのか?
【関連】【精神科医・和田秀樹】闇バイトは「警察の身内」が狙われるまでなくならず/なぜ自民党は「集団犯罪の厳罰化」を嫌がるのか?

引用・参考文献

(*1)「三菱UFJ銀行の貸金庫盗、70人の14億円を銀行が現時点で半額補償…貸金庫内にカメラ設置へ」読売新聞オンライン 2025年1月16日

(*2)「三菱UFJ貸金庫の金塊盗難事件、支店長代理だった元行員を逮捕」Bloomberg 2025年1月14日

(*3)「金融リテール戦略2009における山口副総裁講演『金融危機後のわが国金融機関の経営課題』」日本銀行 2009年11月25日

(*4)麻島昭一「わが国金融制度における分業主義の変遷」専修大学社会科学研究所月報 1974年8月20日

(*5)「金融行政」財務省

(*6)「Co-signing a Loan: Risks and Benefits」NerdWallet 2023年11月3日

(*7)「Effectiveness of Credit Guarantees in the Japanese Loan Market」RIETI

(*8)「Rent Guarantor Companies Replace Joint Sureties and Become Mainstream in Japan」WealthPark 2022年3月3日

(『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』2025年1月26日号より一部抜粋・文中一部敬称略)

この記事の著者・伊東森さんのメルマガ

初月無料で読む

image by: yu_photo / Shutterstock.com

伊東 森この著者の記事一覧

伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版) 』

【著者】 伊東 森 【月額】 ¥1100/月(税込) 初月無料 【発行周期】 第2、第4日曜日発行

print
いま読まれてます

  • 従業員の忠誠心や倫理観の低さが招いた犯罪。三菱UFJ銀行「貸金庫窃盗」が起きた当然の背景
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け