従業員の忠誠心や倫理観の低さが招いた犯罪。三菱UFJ銀行「貸金庫窃盗」が起きた当然の背景

Tokyo,,Japan,-,15,May,2021?mitsubishi,Ufj,Bank,Sign
 

金融機関の信頼性を根底から覆したと言っても過言ではない、三菱UFJ銀行の女性行員による貸金庫窃盗事件。被害総額は14億円と伝えられていますが、なぜこのような事態が起きてしまったのでしょうか。今回のメルマガ『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』では著者の伊東森さんが、さまざまな側面からその要因を考察。さらにこの事件受け大手銀行内で本格化しつつある、貸金庫サービスからの撤退の動きについても併せて紹介しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:日本の金融機関のガラパゴスな問題が生んだ三菱UFJ銀行貸金庫窃盗事件 顧客軽視の極み 連帯保証人制度があるのは日本だけ 日本の労働者の、会社への忠誠心のなさが不祥事を生む

背景に数々の日本“だけ”の理由三菱UFJ銀行「貸金庫窃盗事件」はなぜ起きたのか

日本の金融機関のガラパゴスな問題が生んだ三菱UFJ銀行貸金庫窃盗事件 顧客軽視の極み 連帯保証人制度があるのは日本だけ 日本の労働者の、会社への忠誠心のなさが不祥事を生む

1月14日、三菱UFJ銀行の元行員である今村由香理容疑者(46)が、貸金庫から金塊約20キロ(時価総額2億6,000万円相当)を盗んだ疑いで逮捕された。

今村容疑者は、2020年4月から約4年半にわたり、東京都内の練馬支店と玉川支店で現金や金塊の窃盗を繰り返していたとのこと。被害に遭った顧客は約70人で、被害総額は約14億円。なお三菱UFJ銀行は現時点で約7億円の補償を実施している(*1)。

容疑者は貸金庫の管理責任者という立場を悪用し、銀行保管の予備鍵を不正に使用して貸金庫を開錠した。また顧客の来店時に他の顧客の金庫から現金を一時的に補填し、発覚を遅らせ、貸金庫システムを切電して故障を装っていた(*2)。

他方、この事件は、日本の金融機関が真の意味で顧客本位のビジネスモデルを構築できていなかったことを示唆する。

日本の銀行は近年、どこも低い収益性に悩まされている。この背景には、多くの金融機関が同質の商業銀行業務を展開し、結果として金利競争に終始してきたことがある(*3)が、この過度な競争が、リスク管理や内部統制への投資を抑制し、結果として今回のような事件を引き起こす土壌を作った可能性が。

要約

この事件は、日本の金融機関のリスク管理や内部統制の問題、従業員の忠誠心や倫理観の低下を顕在化。また日本の金融機関特有の連帯保証人制度などの構造的問題は、顧客の利益を軽視したものだ。

記事のポイント

  • 三菱UFJ銀行の元行員が貸金庫から金塊や現金を盗み、被害総額約14億円の事件が発覚。
  • 日本の金融機関は収益性の低さや過度な競争が原因でリスク管理や内部統制が弱体化し、事件の背景となった可能性が指摘。
  • 貸金庫サービスの見直しが進む中、大手銀行は撤退を検討する一方、地方銀行は顧客獲得の好機として強化を模索している。

この記事の著者・伊東森さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 従業員の忠誠心や倫理観の低さが招いた犯罪。三菱UFJ銀行「貸金庫窃盗」が起きた当然の背景
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け