核兵器保有国を複数巻き込む世界戦争に発展する恐れも
もしエジプト、ヨルダンが、程度こそ低くなったとしても、トランプ大統領がぶち上げた計画の片棒を担ぐような事態になれば、中東地域におけるタブーをアメリカが中心に破ることに繋がってしまい、これまでデリケートなバランスで保たれてきた安定のための“壁”が一気に崩れ去り、中東地域は混乱の渦に巻き込まれることになります。
これまでその混乱が利するのはイスラエルとイランと言われてきましたが、今では、中国の仲介もあり、サウジアラビアを中心とするスンニ派諸国とイランが外交関係を構築し、関係の改善に乗り出していることもあり、中東の混乱とパンドラの箱から漏れ出す反イスラエルの炎がアラブ諸国とイランを結びつけ、それが隣国トルコにも広がりAnti-Israelのunited frontが成り立つようなことがあれば、イスラエルは大きな壁に阻まれ、かなりの損失と損害を覚悟しないといけない事態に直面することになります。
そしてトルコとイランが関わるということは、そこに期せずしてロシアと中国が引き寄られ、思わぬところで欧米と中ロの対立が再燃することになります。そしてそれはまたトルコの隣国でもあるウクライナに飛び火し、その炎がロシア・ウクライナ周辺国に広がるような事態になれば、もう誰も手が付けられない事態になります。
最悪の場合、核兵器保有国を複数巻き込む初めての世界戦争に導かれていくことになりかねません。
ガザ所有に関するトランプ大統領の発言と行動、そして今日行われるロシア・ウクライナの和平協議前に出てきたヘグセス国防長官の発言は、アメリカによって保障されてきた国際秩序の崩壊を示すだけでなく、揺らぎ続けてきたRule of Law(法の支配)の基盤をさらに損ない、中国など、他地域で拡張主義的な行動を続ける大国への危険なメッセージとなり、取り返しのつかないほど、国際社会の分断を鮮明にすることになるかもしれません。
トランプ大統領は自らのレガシーづくりのために「力による平和」を推し進める方針のようですが、イスラエルという例外を除き、どの国がそれを本気で支え、アメリカと共に新しい国際秩序を構築する未来図を描くのでしょうか?
それとも挙ってアメリカ、いやトランプ大統領と距離を置き、崩れ行く国際秩序を、手をこまねいて嵐が過ぎ去るのを待つかのように、ただ指をくわえて眺めるのか?
トランプ大統領とプーチン大統領のように、ある程度、個人の方針で決めることができるリーダー同士の折衝ならば、一気に物事が動くことも考えられなくもないのですが、その奇跡的な状況に希望を託すだけで良いのでしょうか?
皆、危機を重々感じながら身動きが取れず、運にすべてを任せているように見え、それに恐怖を感じているのは、果たして私だけでしょうか?
以上、今週の国際情勢の裏側のコラムでした。
(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2025年2月14日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録ください)
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image by: Presidential Press and Information Office, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons









