プーチンとゼレンスキーの回答如何で決まる両国の次のステップ
これまでに伝えられている内容を総合すると、「トランプ大統領は、これまでバイデン政権時にウクライナに供与された支援を取り戻すことを念頭に、支援相当額のレアアースをアメリカに提供することを、ウクライナに要求しており、ウクライナ政府は前向きに検討している」「ロシアによるクリミア半島侵攻と一方的な併合以前の状態に戻すことは、もはや困難だとトランプ大統領は考えており、戦争を終わらせるためには、すでにロシアが一方的に編入したウクライナ東南部4州とクリミア半島を“公式に”ロシア領としてウクライナから切り離すのが現実的だと言われている」「ロシアもウクライナも、トランプ大統領が提示する停戦合意案に抵抗する場合には、容赦なくアメリカからの制裁に直面することになると、アメリカ政府が脅している」といった状況だと思われます。
一つ目については、背に腹は代えられないとゼレンスキー大統領は考えているのかもしれませんが、これはどう見ても停戦成立後のウクライナ復興の財源となり得るレアアースの貿易の芽を摘むことを意味するため、中長期的には望ましい条件だとは考えられません。
ただ、その見返りにアメリカによる対ウクライナ軍事支援の拡大と維持が条件として示されているのであれば、“ウクライナの存亡”に自身の政治生命を賭けていると思われるゼレンスキー大統領は、とりあえずのメイクアップとして飛びつき、トランプの4年間を生き延びることができれば、反転の機会があると考えているのかもしれません。もちろん、それまでゼレンスキー政権が生き延びることができていればいいのですが。
二つ目については、プーチン大統領的には自身の面子を保ち、“ロシア国民及び同胞たちの安全を守り抜いた”というアピールが出来、“特別作戦”の実行によって生じた犠牲に対する非難をかわすことができるため、大いに喜ぶかもしれませんが、ゼレンスキー大統領とウクライナにとっては、キーウが位置するウクライナ中部(ウクライナ正教会エリア)と西部(カソリックエリア)を守り抜くことが出来たとはいえ、大きな失態を犯したと捉えられ、確実に政治生命を失うことに繋がると思われます。
三つ目については、プーチン大統領とゼレンスキー大統領のどちらが先に、トランプ大統領にYESの回答をするかによって、両国が直面する次のステップが決まるものと考えられます。
もし、二つ目の条件が提示され、かつその受け入れと引き換えにアメリカ政府がロシア政府に課す経済制裁の解除(たとえ一部であったとしても)が同時に提案されるのであれば、ロシアがここでNOを突き付ける可能性は低いかと思います。
もちろんすんなりとYESとは言わず、「いかにこれが苦渋の選択だったか」的なアピールを行い、その上で「和平実現のためには致し方ないと考えた」と、いったいどの口が言うのだろうか?という形式で合意するのだと思います。
逆に、トランプ大統領が以前提案していた“ロシア・ウクライナ間に緩衝地を設け、そこに欧州軍が平和維持軍として駐留し、戦闘の再発を防止する”というアイデアが提起され、その規模が、ゼレンスキー大統領が各地で求めているレベルにまで達する内容であれば、ウクライナが先にYESを宣言することになるかもしれません。
実際には一つ目から三つ目までの内容が複合的に混じった内容がテーブルに置かれるのではないかと推察しますが、14日(今日)にミュンヘンでどのような条件が協議にかけられるのか?そしてそれを誰が持ち出すのか?によって今後の展開が大きく変わります。
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