各国首脳とウクライナ問題の意見を交わすのは困難な石破首相
さて、付け加えると、読者の皆さんは最近、この「NATO」と「OSCE」という言葉のワンセットを日本国内で耳にしたのをご記憶だろう。
石破茂首相は「アジア版NATO構想」が年来の持論なのだそうで、昨年11月には米ハドソン研究所のサイトに論文を寄稿した(本誌No.1280)。しかしその後は、日本国内ではもちろん米国内でも疑問の声が上がっているとかでこの構想を封印し、先の訪米でも口にすることはなかったし、どうしてそうなのかの説明も一度もない。
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ところで面白いのは公明党で、山口那津男=元代表が1月8日石破茂首相と面会し、「アジア版OSCE」を創設する同党の構想について説明し、さらに13日から自公両党幹事長が訪中して開かれる「日中与党交流協議会」の席でその構想を中国側に提案するつもりだと伝えた。それにに対し石破は「しっかり勉強してみたい」と応じ、さらに翌日、東南アジア訪問に先立つ記者会見で「アジア版OSCEを念頭に置いて各国と対話していく」考えを示した(本誌No.1294)。
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これってかなり凄い話で、山口は明らかに、石破の「アジア版NATO構想」への対抗概念として提起していて、ある意味、このところじわじわと目立つようになった公明党の「脱自民」=独自性発揮の一環とも受け取れる。
ところが石破は「しっかり勉強してみたい」「アジア版OSCEを念頭に置いてアジアと対話していきたい」などと軽々しいことを言っていて、もしOSCE型で行くならNATO型は否定されるのだということをまるで理解していないように見える。
こういう基礎概念さえ整理できていないのでは、トランプやプーチンにせよ欧州首脳やゼレンスキーにせよ、切迫したウクライナ終戦問題について意見を交わすのは到底難しいのではあるまいか。
(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2025年2月17日号より一部抜粋・文中敬称略。ご興味をお持ちの方はご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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